未来を整える験担ぎ――スポーツメンタルコーチが実践する験担ぎ

験担ぎとは、不安を和らげ、心を安定させるための心理的行動です。
スポーツの現場では、験担ぎが集中力や判断力を支えるケースも多く見られます。
本記事では、スポーツメンタルコーチの視点から、験担ぎの意味、ルーティンとの違いを解説。
私はスポーツメンタルコーチとして、日々選手の心と向き合う中で、 「技術や戦術だけでは届かない領域」が確かに存在することを感じています。
選手の心が揺らぐ場面を見てきたからこそ、 私自身も心の基準を整える方法を大切にしてきました。
その一つが、今回のテーマである験担ぎです。
験担ぎは、単なる気休めではありません。 未来に向けて心の流れを整えるための、静かな方法です。
ここからは、験担ぎの本質、ルーティンとの違い、 そして競技者が本来の力を発揮するために必要な「心の準備」について深く掘り下げていきます。
験担ぎとは何か?
験担ぎ(げんかつぎ)とは、自分にとって縁起の良い行動と思われることを意図的に取り入れ、良い流れを引き寄せようとする行為です。
ただし、運任せだけではなく、むしろ、心を整え、安心感をつくり、迷いを減らすための心理的な仕組みと捉えています。
たとえば、試合当日に選手が「勝つ」にかけてカツ丼を食べる。野球選手が試合前に必ず同じ靴下を履く。サッカー選手がピッチに入るときに必ず右足から入る。
これらはすべて験担ぎであり、意味があります。人は不安を抱えたままでは本来の力を発揮できません。験担ぎは、その不安を静かに溶かし、「大丈夫」という安心感を心に灯す行為と言える。
私自身の験担ぎ──毎月の「一日参り」
私が大切にしている験担ぎが「一日参り」です。毎月1日に神社へ参拝し、無事に新しい月を迎えられたことへの感謝を伝える。
この感謝の儀式を行うことで、心が整い、不安が薄れ、安心感が増します。そして、「今月も大切に生きよう」という静かな覚悟が生まれる。
これは、私にとっての未来に向けた心の準備です。
験担ぎは「心の安全基地」をつくる
人は、不安・迷い・焦り・緊張といった感情が強いとき、判断が鈍ります。これは競技者に限らず、誰にでも起きること。
験担ぎは、その揺らぎを静かに整える心の安全基地になります。
「このお守りを持っているから大丈夫」
「この儀式をしたから準備は整った」
「この場所に来たから気持ちが切り替わる」
こうした根拠のない安心は、実はとても強い。心理学ではプラシーボ効果(偽薬効果)と呼ばれますが、心が安心するなら、それは本物の効果です。
ルーティンと験担ぎの違い──「今」と「未来」
多くの人が混同しがちなルーティンと験担ぎ。その違いは、目的の時間軸にあります。
ルーティン
目的:今ある自分のパフォーマンスを最大化するための行動の型
特徴
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科学的
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再現性が高い
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身体のリズムを整える
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技術的な準備の一部
例:試合前のストレッチ、呼吸法、音楽を聴く、ウォーミングアップの順番
験担ぎ
目的:未来に向けて心の流れを整える心理的な儀式
特徴
例:神社に参拝する、勝負靴下を履く、特定の言葉を唱える、縁起の良い食べ物を食べる
違いを一言で言うなら
ルーティンは「今」の準備。験担ぎは「未来」の準備。
どちらも必要で、どちらも大切です。
験担ぎを取り入れてみてほしい
験担ぎとは、特別な力を持った人だけが行うものではありません。 むしろ、昔から誰もが自然と取り入れてきた心のよりどころのようなものです。
勝負の日にカツ丼を食べる。
大切な場面ではいつも同じ靴下を履く。
試合の前に神社へ参拝する。
玄関や部屋を整えて、良い流れを迎え入れる。
朝、太陽の光を浴びて一日を始める。
こうした行為はどれも、心の奥でそっと背中を押してくれる。
「これをしたから大丈夫」 「今日の流れはきっと良くなる」
そんな小さな安心が、静かに灯る。
だからこそ、あなたの日常にも、ひとつでいいから験担ぎを置いてみてほしい。 その小さな習慣が、思っている以上にあなたの心を支えてくれる。
まとめ:験担ぎは、心を守るための「もう一つの軸」
ルーティンは「今」を整える。 験担ぎは「未来」を整える。
どちらも必要で、どちらも大切です。
そして、心が整ったとき、人は本来の力を発揮できる。
私が毎月の一日参りを続ける理由も、 選手が自分なりの験担ぎを大切にする理由も、 すべては「心を守るため」。
だからこそ、あなたにも 自分だけの験担ぎ をひとつ持っていてほしい。
大きなものじゃなくていい。 誰かに見せる必要もない。 あなたの心が静かに落ち着く、小さな習慣でいい。
その小さな習慣は、 迷ったときに足元を照らし、 揺れたときに呼吸を戻し、 未来の流れをそっと整えてくれる。
人生は、大きな決断よりも、 こうした静かな選択によって変わっていく。
どうか、あなたの未来を支える一つを、 今日からそっと始めてみてほしい。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者