スポーツメンタルコーチ上杉亮平
試合で力を発揮できないあなたへ、心の土台を整える伴走者
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涙が心を軽くする──スポーツメンタルコーチが語る「無意識ストレスを流す情動の涙」と脳科学

 

以前、私は 「気づかないうちに溜まる“無意識ストレス”──競技者の心を蝕む4つの原因と整え方」 というコラムを書いた。

競技者の心は、本人が気づかないうちにストレスを抱え込み、 その蓄積がパフォーマンスを静かに蝕んでいく。 そして、無意識ストレスは自覚できないからこそ厄介。

 

今回のテーマは、その無意識ストレスを解消するための方法のひとつでもある「涙」。

涙は弱さではない。 涙は逃げでもない。 涙は、心が自分を守るために持っている自然の排水機能だということ。

競技者にとっても、日常を生きる人にとっても、 涙は心を軽くし、無意識の緊張をほどくための強力なツールになる。

 

人間の涙には「3種類」ある

まず、人間の涙には3つの種類がある。

 

基礎分泌の涙

目を乾燥から守るために常に出ている涙。

 

反射の涙

玉ねぎを切ったときや、目にゴミが入ったときに目を守るために出る涙。

 

情動の涙

感動したとき、悲しいとき、嬉しいとき、心が揺れたときに流れる涙。

今回のテーマは、この 「情動の涙」 

情動の涙だけが、 ストレスを流し、心を軽くし、脳を整える という特別な働きを持っている。

 

 情動の涙は「共感脳」から生まれる

情動の涙は、脳の中でも 前頭前野・島皮質・扁桃体 といった共感脳と呼ばれる領域が深く関わっている。

人が涙を流すとき、脳ではこんなことが起きている。

 

  1. 他者の感情に共感する

 

  1. 過去の記憶とつながる

 

  1. 心の奥にある感情が動く

 

  1. 無意識に抑えていた感情が表面化する

 

つまり、 涙は「心が動いた証拠」であり、 その瞬間、脳は感情の整理を始める。

 

情動の涙が心に良い理由(科学的根拠)

情動の涙には、科学的に証明された効果がある。

 

ストレスホルモン(コルチゾール)が低下する

情動の涙には、ストレス物質が含まれている。 涙を流すことで、身体の中のストレス濃度が下がる。

 

副交感神経が優位になり、身体がゆるむ

涙を流した後に「ふぅ…」と息が抜けるのは、 身体がリラックスモードに切り替わった証拠。

 

セロトニンが分泌され、心が安定する

涙を流すと、脳内で幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが増える。 これにより、心が落ち着き、安心感が生まれる。

 

 感情の整理が自然に進む

涙は、言語化できない感情を外に流す。 泣いた後に「スッキリした」と感じるのはそのため。

 

無意識の緊張がほどける

涙は、意識では触れられない無意識のストレスを解放する。 競技者が試合後に涙を流すのは、まさにこの作用。

 

それでも「泣けない人」がいる理由

ここがとても重要。

 

情動の涙は心に良い。 しかし、泣けない人も多い。

その理由は、 無意識に「涙を流してはいけない」とブレーキがかかっているから。

 
過去の経験で「泣く=弱い」と刷り込まれた

 

  • 我慢しなさい

 

  • 泣くな(泣くとカッコ悪い)

 

  • 男なんだから

 

  • 強くなれ(泣く=弱い)

 

こうした言葉は、無意識に深く残る。

 
競技者は感情を抑える文化の中で育つ

 

  • 泣くと集中が切れる、メンタルが乱れる

 

  • 泣くと弱く見える

 

  • 泣くと負けを認めるようで嫌だ

 

こうした価値観が、涙を止めてしまう。

 
心が疲れすぎていて、涙が出ない

ここで、もう一つ大切な視点を伝えたい。

脳が疲れすぎている人は、前頭前野が弱っている傾向があり、泣きにくい。

 

前頭前野は、

 

  1. 感情のコントロール

 

  1. 思考

 

  1. 判断 を司る場所。

 

ここが疲弊すると、 心が動きにくくなり、涙が出にくくなる。

これは決して「冷たい」「涙もろくない」わけではない。 ただ単に、 脳が疲れすぎていて、涙を出す余力が残っていないだけ。

 
経験が豊富な人ほど涙もろくなる

 

これは逆に、 心の許容量が増え、共感脳が成熟している証拠。

年齢を重ねるほど涙もろくなるのは、 脳が豊かになっているからだと言える。

 

涙を出やすくするには「セロトニン神経」を活性化させること

涙を流すためには、 脳内のセロトニン神経がしっかり働いていることが重要。

 

セロトニンは、

 

  1. 心の安定

 

  1. 安心感

 

  1. リラックス

 

感情の柔らかさ をつくる神経伝達物質。

このセロトニン神経が活性化すると、 心がほぐれ、感情が動きやすくなり、 涙が自然と出やすい状態になる。

つまり、 「泣けるようになる」ためには、 まず 脳の土台を整えること が必要。

涙は、心が動いた結果として出るもの。 その心が動く余白をつくるために、 セロトニン神経を整えることが欠かせない。

 
セロトニン神経を活性化させる方法
  1. 朝の太陽光を浴びる

 

  1. リズム運動(散歩・軽いジョギング・咀嚼)

 

  1. 深い呼吸

 

  1. 姿勢を整える

 

  1. 人との温かいコミュニケーション

 

これらはすべて、 涙が出やすい心の柔らかさを取り戻す行為。

涙活は、ただ泣こうとすればいいわけではない。 泣ける状態をつくるための脳の準備も必要。

 

まずは「自分が何に心を動かされるのか」を知る

涙活を始めるとき、 いきなり泣こうとする必要はない。

まずは、 自分の心がどんな刺激で動くのかを知ること。

 

  1. 音楽
  2. 映画
  3. ドキュメンタリー
  4. スポーツの名場面
  5. 誰かのストーリー
  6. 手紙
  7. 過去の写真

 

人によって心のスイッチは違う。

競技者なら、仲間の言葉、恩師の言葉、過去の自分の映像 がスイッチになることも多い。

自分の心が動くポイントを知ることが、涙活の第一歩になる。

 

最後に

涙活は「必ずやるべき」というもではない。

 

無理に泣こうとする必要もないし、涙が出ない自分を責める必要もまったくない。

ただ、選択肢として持っておく価値はある。

 

涙は、無意識ストレスを流す自然な方法のひとつであり、 涙を流したあとに、

 

心が軽くなる、思考がクリアになる、自分を取り戻せる。

 

こうした変化を感じる人は確かにいるということ。

とはいえ、ストレス解消の方法は人それぞれ。 だから私は、「涙活こそがストレス解消方法の全てだ」と押しつけるつもりはない。

 

ただ、心が重くなったときに涙という選択肢を持っているかどうかは大きい。

 

心が限界に近づいたとき、そっと寄り添ってくれる力を持っている。

泣くことが正解でも、不正解でもない。 そして、泣かなければいけないという決まりもない。

 

大切なのは、 自分の心が少しでも軽くなる方法を、自分で選べるようにしておくこと。 涙活は、その選択肢のひとつにすぎない。

 

ただ、涙という方法が、 あなたの心をそっと支えてくれる場面があるかもしれない。 その可能性を、ひとつの選択肢として持っておいてほしい。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

コラム著者
プロスポーツメンタルコーチ上杉亮平
全てのアスリートが競技を楽しみ、自分らしさを輝かせる世界を創る。ことを目指し
「メンタルで視点(せかい)が変わる」この言葉胸にアスリートを自己実現へと導くサポートをしています。詳しくはこちら

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