スポーツメンタルコーチ上杉亮平
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時間の密度を高める──同じ1時間でも心の質が変わる理由

 

私たちは、1日24時間という同じ量の時間を生きています。 だけど、同じ1時間でも「濃さ」がまったく違うことがあります。

1時間練習したのに、何も残らない日、30分でも、驚くほど集中できた日、5分のイメージトレーニングで、感覚が一気に整う瞬間

この違いを生むのが、時間の密度です。

時間の密度とは、 「その時間にどれだけ心が存在していたか」 「どれだけ感性が働いていたか」 「どれだけ自分の軸で動けていたか」 によって決まる質の概念です。

量ではなく、質。 長さではなく、濃さ。

競技者にとって、この密度こそがパフォーマンスを左右する鍵になります。

 

密度の高い時間と低い時間

──脳の中で何が違うのか

まず、時間の密度は「脳の使われ方」で決まります。

 

密度の低い時間とは?

注意があちこちに散って、何を目的にしているのか自分でもよく分からないまま動いていて、気持ちも落ち着かず揺れ続けて、周りの声や情報に引っ張られたり、どこか「やらされてるだけだな」と感じてしまう時間ってありますよね。

 

こういうとき、脳の中では本来じっくり考えたり集中したり創造したりする前頭前野があまり働かず、代わりに不安や警戒を担当する扁桃体が静かにスイッチを入れてしまう。

 

すると、気づけばとりあえずこなすだけの浅い時間になっていく。どれだけ長く練習しても、深いところで学習が起きていないから、ただ疲れるだけで、手応えも残らない。そんな空虚さだけが後に残るような、密度の薄い時間。

 
密度の高い時間とは?

注意がひとつの場所にすっと集まっていて、 何を目指しているのかが自分の中でちゃんと見えていて、 気持ちも大きく揺れず、静かに落ち着いている。

 

しかも「いま、自分で選んでここにいる」という感覚がちゃんとある。

 

そんな状態になると、密度の低い時間とは逆で脳の前頭前野が静かに、働き始めて、 深いところで学ぶモードに切り替わっていく。

だから、時間の長さとはあまり関係がなくて、 ほんの短い瞬間でも、濃く染み込むように学習が進んでいく。

これが、密度の高い時間というものの正体に近い。

 

密度を上げるための注意の使い方

時間の密度を決めるいちばん大きな要素は「注意」です。

いま、この瞬間、自分の心をどこに置いているのか、それだけで時間の濃さは変わってしまう。

 

競技者の時間が薄くなるのは、注意が外側に散っていくときです。

 

ミスしたらどうしようとか、コーチにどう見られているんだろうとか、周りと比べて勝手に落ち込んだり、さっき見たSNSの情報が頭のどこかに残っていたり、まだ起きてもいない未来の不安がふっとよぎったり。

 

そういう外側のものに心が引っ張られるほど、時間はどんどん、浅く、薄くなっていく。自分の中にちゃんと「今」が残らないまま、ただ流れていくような時間になる。

 

密度を上げる注意の向け方

① 今ここに戻す

  1. 呼吸
  2. 足裏の感覚
  3. ボールの重さ
  4. 水の抵抗
  5. 体の軸

身体感覚に注意を戻すと、脳は一気に「今」に戻ります。

 

② 目的を一つに絞る

「今日はこれだけできればOK」という一点集中。

目的が多いほど、注意は散り、密度は薄くなる。

 

③ 注意の幅を調整する

  1. 広く周囲を見る
  2. 狭く一点を見る

この切り替えができる選手は、時間の密度が高い。

 

密度を上げるための感性の使い方

時間の密度は、どれだけ感性が働いているかでも大きく変わってくる。

身体の奥で起きている微細な変化とか、空気の流れのわずかな違いとか、動きのリズムやタイミングのズレとか、心の揺れみたいな、言葉にしづらい内側の情報をちゃんとキャッチできているかどうか。

 

そういう感性が動き出すと、脳は深い学習のモードに入っていって、時間の密度が一気に濃くなる。

長さじゃなくて、その瞬間にどれだけ感じられているかで、時間の質が変わってしまう。

 
 

感性を働かせるための方法

 

① 動きを感じる時間をつくる

動きそのものは毎日やっているはずなのに、 感じるために動くという時間は意外と少ない。

走る、打つ、投げる、泳ぐ。

どんな動作でも、 「うまくやる」ではなく「感じる」を目的にした瞬間、 脳の学習の深さが変わる。 同じ動きでも、密度がまったく違う時間になる。

 

② 雑音を減らす
  • 情報

  • 人の視線

  • 比較

  • 評価

外側の雑音が減るほど、感性は働きやすくなる。

 

③ ゆっくり動く時間を入れる

スローモーションのように動くと、 感性が一気に開く。

 

濃い時間をつくる方法

ここからは実践編。

 

① 練習の最初の5分を整える時間にする
  1. 呼吸

  2. 姿勢

  3. 注意の向き

この5分で、その日の密度が決まる。

 
② 練習の目的を1つに絞る

「今日はこれだけでいい」という一点集中。

目的が多いほど、時間は薄くなる。

 
③ 感じる練習を入れる
  1. 目を閉じて動く
  2. ゆっくりフォームを確認する
  3. 音を消して動く

感性が働くと、時間は濃くなる。

 
④ 練習後の1分で振り返りをする
  1. 今日の気づき

  2. 体の変化

  3. 心の揺れ

この1分が、時間の密度をさらに高める。

 

密度が高い人は疲れにくい理由

密度の高い時間を過ごす人は、 実は疲れにくい。

理由は3つ。

 
① 脳の無駄な消耗が少ない

注意が散っていると、脳は大量のエネルギーを使う。 密度が高い人は、注意が一点に集まっているため、消耗が少ない。

 
② 感情の揺れが少ない

密度が高い時間は、心が安定している。 感情の揺れは脳のエネルギーを大量に奪うため、 揺れが少ないほど疲れにくい。

 
③ 納得感が疲労を軽減する

同じ練習でも、 「今日は濃かった」という納得感があると、疲労は軽くなる。

 

最後に

時間の密度は心の質そのもの。 時間の密度とは、単なる効率の話ではありません。

それは、 「どれだけ自分の心と繋がっていたか」 「どれだけ自分の感性を使えていたか」 という、心の質の問題です。

競技者にとって、心が深く働いている時間は才能を育てる土壌になる。 逆に、浅く流れていく時間は、力をそっとすり減らしてしまう。

だからこそ、時間を量ではなく質で捉えることが、競技人生を大きく変える鍵になります。 その一瞬をどう生きるかが、未来の自分をつくっていく。

だからこそ、 今日のどこか一瞬だけでも、密度の高い時間を自分でつくってみてほしい。
 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

コラム著者
プロスポーツメンタルコーチ上杉亮平
全てのアスリートが競技を楽しみ、自分らしさを輝かせる世界を創る。ことを目指し
「メンタルで視点(せかい)が変わる」この言葉胸にアスリートを自己実現へと導くサポートをしています。詳しくはこちら

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