目標が持てない時期があってもいい──その静かな時間が、あなたを強くする

目標が見えなくなる瞬間は、誰にでも訪れる
競技を続けていると、 ある日ふと、目標が見えなくなる瞬間があります。
昨日まで当たり前のように追いかけていたものが、 急に遠く感じる。
「何を目指しているんだろう」 「この先に何があるんだろう」 「自分はどこへ向かっているんだろう」
そんな問いが、静かに胸の奥に沈んでいく。
この感覚は、誰にでも訪れます。 でも、多くの競技者はそれを"異常"だと思ってしまう。
「目標を持てない自分は弱い」 「やる気がないんじゃないか」 「競技者として終わっているのでは」
そんなふうに、自分を責めてしまう。
でも、本当は逆です。
目標が見えなくなる瞬間は、 競技者が"自分の本質"に触れ始めているサインです。
目標を持てない苦しさは、怠けではなく"飽和"
目標を持てない苦しさは、怠けではありません。
むしろ、 心が飽和している状態です。
- やるべきことをやってきた
- 努力を積み重ねてきた
- 結果を求められ続けてきた
- 期待に応えようとしてきた
その積み重ねの先で、 心が静かに疲れてしまう。
疲れた心は、未来を描けません。 未来を描くには、心の余裕が必要だから。
だから、目標が見えなくなる。
これは怠けではなく、 心が「一度止まろう」と言っているだけです。
目標を持てない時期にしか起きない"静かな再構築"
目標が見えない時期は、 何も進んでいないように感じるかもしれません。
実際には、 心の奥で"再構築"が始まっています。
それは、音もなく進む作業です。
- 自分は何が好きだったのか
- どんなプレーが心地よかったのか
- どんな瞬間に身体が軽くなるのか
- 競技と向き合う、どんな関わり方が自分らしいのか
- 何を大切にして競技をしてきたのか
こうした問いが、 ゆっくりと浮かび上がってくる。
目標があるときには、 なかなか出てこない問いです。
目標が消えたからこそ、 心が静かに動き始める。
目標は"外側"から作るものではない
競技者は、気づかないうちに「外側の声」で目標を作ってしまいます。
コーチの期待。 周りの目。 SNSで流れてくる正しさ。 競技界に漂う空気。 「こうあるべき」という無言の圧力。
こうした外側の要素は、本人が望んでいなくても静かに心の中へ入り込みます。
そして、気づけばこうなっている。
「自分の目標」ではなく、 「誰かにとって都合のいい目標」を追っている。
外側から作られた目標は、一見すると立派に見えます。 数字も明確で、期限もあり、周囲から褒められることも多い。
心が動かないまま進むと、努力は重さを帯びていきます。
重くなった努力は、身体を固くし、判断を鈍らせ、競技そのものを苦しいものへ変えていく。
苦しさが積み重なると、自分を責める気持ちが強くなる。
「もっと頑張らなきゃ」 「なんでできないんだ」 「自分は弱いんじゃないか」
弱いわけではありません。 外側の目標は、内側のエネルギーを使えないだけです。
頑張っても心が前に進まない状態が続くと、目標そのものが見えにくくなる。
こうして、競技者が陥りやすい"静かな悪循環"が始まります。 誰にも気づかれないまま、自分の競技が少しずつ遠ざかっていく。
目標は"内側"から湧き上がるもの
本当の目標は、外側ではなく"内側"から生まれます。
それは、言葉になる前の小さな感覚。
- なんとなくやりたい
- なぜか気になる
- 理由はないけれど惹かれる
- 身体がそっちに向かう
- 心が軽くなる
- ワクワクする
こうした"衝動"のようなものが、本当の"目標"の種です。
この種は、数字でも期限でも評価でも測れません。 もっと曖昧で、もっと静かで、もっと個人的なもの。
曖昧さの中にこそ、競技者を長く支えるエネルギーが宿ります。
外側の目標は、期限が来れば終わります。 内側の目標は、終わりがありません。 自分の存在から生まれているため、消えにくいからです。
ただし、この種には条件があります。
心に余裕がないと、見えない。
焦っているとき。 追われているとき。 誰かと比べているとき。 自分を責めているとき。
こうした状態では、内側の声は聞こえません。
目標を持たない時期は、"空白"ではなく"準備"です。
余裕が生まれると、心が静かになり、身体の声が戻り、判断が澄んでいく。 その静けさの中で、ようやく小さな種が姿を現します。
「これ、やってみたいかもしれない」 「なんとなく、こっちだな」 「理由はないけれど、心が軽くなる」
この小さな衝動こそ、競技者を長く支える"本物の目標"に繋がる。
そして、この種は、目標を持たない時期だからこそ見えてくる。
目標を手放すと、"自分の競技"が始まる
目標を手放すと、 不思議なことが起こります。
"自分の声"が聞こえ始める。
- 自分は何を大切にしたいのか
- どんなプレーが好きなのか
- どんな状態のときに強くなれるのか
- どんな関わり方が心地いいのか
こうした感覚が戻ってくると、 競技が"自分のもの"になります。
他人の期待でも、 一般論でも、 周囲の声でもなく。
自分の身体で感じ、 自分の心で判断し、 自分の競技を選ぶ。
その瞬間、 競技者は本来の強さを取り戻します。
目標を持たない時期は、弱さではなく"準備"
目標を持たない時期は、 弱さではありません。
むしろ、 次のステージに進むための準備期間です。
- 心が整う
- 身体の声が戻る
- 判断が澄む
- 余裕が生まれる
- 自分の軸が見えてくる
これらはすべて、 目標がない時期だからこそ研ぎ澄まされる。
目標があるときは、 未来に引っ張られるから。
目標がないときは、 今に戻れる、今に集中できる、自分とより向き合える。
最後に伝えたいこと
目標を持てない自分を責めなくていい。
目標が見えない時期は、 あなたが止まっているのではなく、 静かに"整っている"だけです。
目標は大事。 だからこそ、本当に達成したいと思えない目標を無理やり設定するよりかは目標を手放してみる時期があっても良い。
目標に囚われる必要はない。
見るべきは、 未来ではなく、今の自分。
そして、 結果ではなく、 自分の競技を取り戻すこと。
目標を手放した日から、 あなたの競技は静かに動き始めます。
焦らなくていい。 急がなくていい。
あなたのペースで、 あなたの呼吸で、 あなたの競技を選び続けてください。
その先にこそ、 あなたにしか見えない本当に目指すべき目標、あなたにしか辿り着けない景色があります。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者