欠点を受け入れた瞬間、競技者は余裕を取り戻す──反射モードを抜ける思考法

欠点を持つことは、競技者にとって“避けるべきもの”だと思われがちだ。 完璧であること。 弱点を消すこと。 穴を埋めること。
そうした価値観は、スポーツの世界では特に強い。
だが、実際にはその逆だ。 欠点を抱えたまま進むことこそが、偉大さへ向かう唯一の道になる。
なぜか。 理由は単純で、しかし深い。
欠点を拒否する人は、無難な選択しかできなくなるからだ。 無難さは安全だが、同時に“伸びしろ”を奪う。 挑戦の幅も狭める。 そして何より、競技者としての“色”が消えていく。
余白を失った瞬間、人は「反射モード」に落ちる
競技者が最もパフォーマンスを落とす瞬間は、技術が足りないときではない。 体力が切れたときでもない。
余白がなくなったときだ。
余白とは、心のスペース。 判断のための間。 呼吸のための隙間。
この余白がなくなると、人は“反射”で動き始める。 考える前に反応する。 焦りが判断を奪い、視野が狭くなる。
反射モードに入った競技者は、どれだけ能力が高くても本来の力を出せない。 むしろ、能力が高いほど空回りする。
そしてこの“余白の欠如”は、欠点を隠そうとするほど強くなる。
欠点を隠す努力は、余白を奪う
欠点を隠す。 弱点を見せない。 苦手を克服する。
もちろん、必要な場面もある。 だが、競技者の多くは“必要以上に”欠点を消そうとする。
その結果どうなるか。
・やらなくていい練習に時間を奪われる
・本来伸ばすべき強みが育たない
・自分のスタイルが曖昧になる
・常に「バレないように」と緊張し続ける
・心の余白が消える
つまり、欠点を隠す努力は、競技者のパフォーマンスを静かに蝕む。
欠点を抱えたまま戦う競技者は、余白を持っている。 余白があるから、判断ができる。 判断ができるから、勝負どころで強い。
「できないことを認める勇気」が競技者を強くする
できないことを認めるのは、弱さではない。 むしろ、競技者としての成熟だ。
できないことを認めると、次の3つが手に入る。
① 選択の自由
「これはやらない」と決められる。 やらないことを決めると、やるべきことが鮮明になる。
② 集中力の回復
余計な努力を削ることで、心の余白が戻る。 余白が戻ると、集中力が深くなる。
③ 強みの最大化
欠点を埋めるより、強みを伸ばす方が圧倒的に成果が出る。 競技者の個性は、強みの中にしか存在しない。
役割を見誤った過去が教えてくれたこと
自分が何を求められているのか。 どんな役割を担うべきなのか。 それを知ることは、競技者にとって本当に大事だと思う。
実は、私自身がそこを見誤った経験がある。
身長191cmのFWとして、本来なら高さや体格を活かしたプレーに特化すべきだった。 それが自分の強みであり、チームから求められていた役割でもあったはずだ。
けれど当時の私は、周囲の声に惑わされていた。 身長の低い選手が得意とするプレーにも対抗しようとして、必要のない練習に時間を使っていた。 今振り返ると、本当に勿体なかったと感じる。
自分が何を得意としているのか。 どんな価値を発揮できるのか。 そして、何を求められているのか。
それを理解しないまま、苦手を無理に埋めようとする努力は、結局のところ“自分の強みを薄める行為”だった。 あの頃の私は、それに気づけなかった。
だからこそ今は強く思う。 自分の役割を知り、自分の強みを選び、自分の競技をすること。 それが競技者にとって、何より大切だと。
「やらないことを決める」ことは、競技者の戦略
競技者は、練習量を増やせば強くなるわけではない。 情報を増やせば賢くなるわけでもない。
むしろ、 削ること、捨てること、選ぶこと が強さをつくる。
・やらなくていい練習
・伸ばす必要のない能力
・他人に合わせた努力
・“正しさ”に縛られたフォーム
・自分らしくない戦い方
こうしたものを手放すと、競技者は一気に伸びる。
なぜか。
余白が生まれるからだ。 余白が生まれると、判断が洗練される。 判断が洗練されると、プレーが変わる。
「自分にできること」を自分で選ぶ
競技者にとって最も大切なのは、 自分の競技人生を“自分で選ぶ”ことだ。
コーチの言葉でも 周りの期待でも 一般論でもなく。
自分の身体で感じ、 自分の心で判断し、 自分の未来を選ぶ。
そのためには、欠点を抱えたまま進む覚悟が必要だ。
欠点を抱えたまま進むということは、 「完璧ではない自分」を受け入れるということ。
完璧ではない自分を受け入れた競技者は、 プレッシャーに強くなる。 迷いが減る。 判断が速くなる。 そして、勝負どころで“自分の色”を出せる。
偉大さは「欠点のない人間」ではなく「欠点を抱えたまま進む人間」から生まれる
偉大な競技者に共通するものがある。 それは、欠点がないことではない。
むしろ、欠点だらけだ。 苦手もある。 弱点もある。 不器用な部分もある。
だが、彼らは欠点を隠さない。 欠点を抱えたまま、前に進む。
欠点を抱えたまま進むからこそ、 強みが際立つ。 個性が光る。 判断が冴える。 余白が生まれる。
そしてその余白が、偉大さをつくる。
最後のメッセージ
あなたが今抱えている欠点は、 あなたの可能性を奪うものではない。
むしろ、 あなたの強さを形づくる“素材”だ。
欠点を抱えたまま進む勇気を持つこと。 やらないことを決めること。 余白を取り戻すこと。 自分の強みを選び抜くこと。
それらはすべて、競技者としての“戦略”であり、 あなたの未来を切り開くための“技術”だ。
欠点を恐れず、 余白を失わず、 自分の道を選び続けてほしい。
その先にこそ、 あなたにしか辿り着けない偉大さがある。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者