スポーツメンタルコーチ上杉亮平
試合で力を発揮できないあなたへ、心の土台を整える伴走者
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目的地に急ぐ理由と、その先にあるもの──競技者が“歩き方”に価値を見出すために

 

人は目的地(目標)に、できるだけ早く辿り着こうとする。 それは競技者であっても、そうでなくても、ほとんど本能のように。私自身も例外ではない、無意識のうちに急いでしまい後になって気づかされる。

 

試合で勝ちたい。 記録を更新したい。 結果を出したい。 認められたい。 次のステージへ進みたい。

そんな思いがあるとき、 人は「できるだけ早くそこに辿り着きたい」と願う。 まるで、今この瞬間の自分では足りないかのように。 まるで、目的地に着けば“何かが満たされる”かのように。

なぜだろう。 なぜ人は、そんなに急ぐのか。 なぜ「早く着くこと」に、あれほどまでに価値を感じるのか。

 

それには、いくつかの理由がある。

 

目的地に急ぐ心理的・科学的背景

まず、心理学的には「目的達成による報酬」が関係している。 人間の脳は、目標を達成するとドーパミンが分泌される。 この快感を早く得たいという欲求が、行動を加速させる。

また、認知科学の分野では「時間の効用」という考え方がある。 時間は有限であり、目的地に早く着けば“残りの時間”を他に使える。 この“効率性”を重視する傾向が、現代人には特に強い。

さらに、移動に対する“不効用”──つまり「移動は疲れる・面倒・無駄」と感じる傾向もある。 目的地に着くまでの時間を“我慢の時間”と捉えると、 人はそれを短縮したくなる。

 

【参考】移動時間短縮意向と主観的意味の関連研究によると、 「移動中の活動が意味あるもの」と認識されれば、 人は移動時間を短くしたいとは思わなくなる。

つまり── “目的地に着くまでの時間”が意味あるものになれば、 人は急がなくなる。

 

目的地に着いた瞬間、達成感は消える

でも、こうして急いで辿り着いた目的地は、 意外なほどあっけなく、達成感が消えてしまう。

「やった」と思ったのは一瞬。 そのあとすぐに、 「次はどうしよう」 「もっと上を目指したい」 「これだけじゃ足りない」 そんな気持ちが湧いてくる。

これは人間の“適応”という性質によるもの。 心理学では「ヘドニック・トレッドミル」と呼ばれる。 どんなに嬉しいことも、時間が経てば“当たり前”になる。 そして、また新しい刺激を求める。

競技者なら、なおさら。 目標を達成しても、次の大会がすぐにやってくる。 勝っても、もっと強い相手が現れる。 記録を更新しても、さらに更新したくなる。

目的地は、通過点になる。 そして、また走り出す。

 
だからこそ、“どう歩いたか”が人生の満足度を決める

 

目的地に着くことは、もちろん大切だ。 ただ、それだけでは人生の満足度は高まらない。

むしろ、 その目的地に“どう歩いて辿り着いたか”が、 人生の質を決める。

どんな景色を見たか。 誰と歩いたか。 どんな感情を味わったか。 どんな工夫をしたか。 どんな失敗をしたか。 どんなふうに立ち直ったか。

それらが、人生の“記憶”になる。 そして、満足感になる。

 

私自身の話

一人目の契約選手に出会うまで

 

私はプロスポーツメンタルコーチとして、 一人目の契約選手に出会うまで、かなり時間がかかった。

焦りもあった。 「早く辿り着きたい」と思ったことも何度もある。 ただ、今振り返ると── 時間がかかったからこそ、その一人の有難みを感じられた。

そして、その経験があったからこそ今、選手一人ひとりを大切にできていると思っている。 苦労したけど、なんだかんだ楽しみながら過ごせた。 幸せだったとさえ思える。

この感覚は、私にとってすごく大切なこと。

 
早く辿り着くことが悪いわけではない

 

もちろん、早く辿り着くことが悪いとは思わない。 それが必要な場面もあるし、 早く結果を出すことで得られるものもある。

ただ、 時間をかけて辿り着いた人にしか得られない価値がある。

その価値は、 “歩き方”の中にしか生まれない。

 

だかこそ、今の状況よりも今の行動に目をむけてほしい。

 

競技者に伝えたい──楽しむ余白を持ってほしい。

競技生活は、とても厳しい。 外から見れば華やかに見える瞬間があっても、 その裏側には、言葉にできないほどの重圧や孤独がある。 トップレベルになればなるほど、 「楽しむ」なんて軽々しく言えないことも、私はよく知っている。 楽しむ余裕なんてない。 楽しむなんて甘えだ。 そんなふうに感じる日もあるだろう。

ただ、それでもなお── ふとした瞬間に「どうしたら楽しめるかな」と考えられる余裕を持っていてほしい。

ずっと楽しめとは言わない。 常に笑っていろとも言わない。 そんなことは現実的じゃないし、 競技の世界はそこまで甘くない。

ただ、 ほんの一瞬でいい。 練習の合間の呼吸のタイミングでもいいし、 移動中の数十秒でもいい。 試合前のルーティンの中に、 「どうしたら今日の自分は、この状況を少しでも楽しめるだろう」 そんな問いをひとつだけ置いてみる。

その問いがあるだけで、 競技者の心の“歩き方”は変わる。

目的地に向かう道のりは、 ただ苦しいだけの一本道ではなくなる。 少しだけ景色が見えるようになる。 少しだけ呼吸が深くなる。 少しだけ、自分の足で歩いている感覚が戻ってくる。

そして、その“少し”が積み重なると、 人生の満足度は静かに底上げされていく。

競技者は、どうしても結果に意識が向きやすい。 勝つか負けるか。 成功か失敗か。 数字が伸びたか、落ちたか。 評価されたか、されなかったか。

でも、人生の満足度は、 結果だけでは決まらない。 むしろ、 その結果に向かうまでの“歩き方”が、 人生の質を決めてしまう。

楽しむ余白を持つというのは、 その歩き方に“色”をつけること。 ただ前に進むだけではなく、 自分の足で、自分のペースで、 自分の感情を抱えながら進むということ。

競技者としての人生は長いようで短い。 そして、短いようで深い。 だからこそ、 その道のりのどこかに、 “楽しむ”という感覚を少しでも残しておいてほしい。

それは、あなたの競技人生を支える静かな灯になる。 そして、逆境の中でも前に進むための、 確かなエネルギーになる。

 

最後に──目的地は、人生の一部でしかない

目的地に向かうことは、人生の中で何度も繰り返される。 辿り着けば、また次の目的地が見える。 それが人生。

だからこそ、 目的地に着くことだけを目的にしないでほしい。

どう歩いたか。 どんなふうに進んだか。 どんな感情を味わったか。 どんな工夫をしたか。

それらが、 あなたの人生を豊かにする。

そして、 競技者としての“心の軸”になる。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

コラム著者
プロスポーツメンタルコーチ上杉亮平
全てのアスリートが競技を楽しみ、自分らしさを輝かせる世界を創る。ことを目指し
「メンタルで視点(せかい)が変わる」この言葉胸にアスリートを自己実現へと導くサポートをしています。詳しくはこちら

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