スポーツメンタルコーチ上杉亮平
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逆境とともに進む選手へ──感情と行動を整える静かな工夫

 

逆境に押しつぶされそうになる瞬間は、静かに訪れる。

競技者の心が折れそうになるときというのは、 大きな事件が起きた瞬間だけではない。 むしろ、もっと日常的で、もっと気づかれにくい形でやってくる時がある。

練習での小さなミスが続いた日。 誰かの何気ない一言が胸に刺さったまま抜けない夜。 自分でも理由のわからない焦りが、じわじわと呼吸を浅くしていく朝。 「なんでこんなに苦しいんだろう」と思いながらも、 その苦しさを誰にも言えず、ただ抱え込んでしまう時間。

競技者の心は、外から見えるよりずっと繊細で、 そしてその繊細さゆえに、 ほんの少しの揺れが大きな波へと変わってしまうことがある。

だからこそ、 心が折れる前に“扱い方”を知っているかどうかが、 逆境を越えられるかどうかを決める。

 

ストレスコーピング──心を扱うための技術

ストレスコーピングとは、 ストレスに対して自分がどう対処するかという“工夫”のことだ。

ストレスそのものを消すことはできない。 競技者である以上、プレッシャーも、期待も、比較も、評価も、 避けることはできない。

ただ、 ストレスをどう扱うかは選べる。

この“選べる”という感覚が、 競技者の心をしなやかにする。

ストレスコーピングにはいくつか種類があるが、 ここで最も大切なのは──情動焦点型コーピング

 

情動焦点型コーピング

──心の揺れを整える工夫

競技者は、外側の状況を変えられない場面が圧倒的に多い。

試合の空気。 相手の強さ。 観客のざわめき。 審判の判定。 天候。 環境。 

のように変えられないものだらけ。

だからこそ、 変えられる“内側”を整える工夫が必要になる。

情動焦点型コーピングは、 ストレスによって生まれた“感情”を整える方法。

深呼吸でもいい。 静かな時間でもいい。 身体をゆるめることでもいい。 書くことでも、香りでも、音でも、光でも、触感でもいい。

大事なのは、 短い時間で心がリラックスできることを、 自分の生活の中に“習慣として”持っているかどうか。

揺れたときに整えるのではなく、 揺れにくい心をつくるために整える。

そして、 朝・昼・晩で1つずつ、自分に合うコーピングを持つ。 これが、心の揺れ方を根本から変える。

 

感情予測という落とし穴

──ずっと続く感情はない

人は、 「この苦しさはずっと続く」と錯覚する。

これを心理学では 感情予測 と呼ぶ。

未来の感情を“悪い方向に”予測してしまう癖だ。

試合でミスをしたとき、 「この落ち込みはしばらく続く」と思い込む。 練習でうまくいかないとき、 「この不安は消えない」と感じる。

実際は、 感情は波のように変わる。 状況が変わらなくても、感情は変わる。

落ち込んだまま一生過ごす人はいない。 怒り続ける人もいない。 不安が永遠に続くこともない。

感情は、 必ず動く。 必ず変わる。 必ず弱まる。

だから、 「この苦しさは続く」と思ったときこそ、 一度立ち止まってほしい。

その感情は、 あなたを支配し続けるものではない。

 

反芻思考という罠

──だから“没頭できるもの”が必要になる

人は、嫌な出来事を何度も何度も頭の中で再生してしまう。 これを反芻思考という。

反芻は、 心を削る。 集中力を奪う。 自信を蝕む。

そして厄介なのは、 反芻は“考えているつもり”になれること。

でも実際は、 何も進んでいない。

だからこそ、 反芻から抜けるためには 没頭できるもの が必要になる。

短い時間でいい。 数分でもいい。

没頭は、 反芻のループを断ち切る“出口”になる。

 

行動フォーカス

──状況ではなく、行動に目を向ける

逆境に弱い選手は、 状況に意識が向きすぎる。

相手が強い。 調子が悪い。 環境が悪い。 運が悪い。 周りがうるさい。 評価が怖い。

状況は変えられない。 だから苦しくなる。

逆境に強い選手は、 状況ではなく 行動 にフォーカスする。

今できることは何か。 どんな小さな行動でもいい。 1ミリでも前に進む行動を選ぶ。

行動は、 心を前に進める“ハンドル”と言える。

 

ディフュージョン

──思考と距離を取る工夫

ディフュージョンとは、 思考と自分を切り離す方法のこと。

「ミスしたらどうしよう」 「また失敗するかもしれない」 「自分は弱い」 「うまくいかない」

こうした思考は、 そのまま受け取ると心を支配する。

でも、 思考は“ただの言葉”だと認識する。

事実ではない。 真実でもない。 あなたそのものでもない。

ディフュージョンは、 思考を“眺める側”に立つ方法。

思考に飲まれず、 距離を取り、 扱えるようになる。

これは、 競技者にとって非常に強力なメンタル技術だ。

 
逆境に潰されない選手は、強いのではなく、扱い方を知っている。

 

心は揺れる。 不安にもなる。 落ち込むこともある。 逃げたくなる日もある。

それでいい。 それが人間という生き物。

大事なのは、 揺れたときにどう扱うか。 どう戻るか。 どう整えるか。

逆境に強い選手は、 心が強いのではない。 心を整える工夫をしているだけ。

 

朝・昼・晩の小さな習慣。 感情予測の理解。 反芻から抜ける没頭。 行動フォーカス。 ディフュージョン。

これらはすべて、 あなたの心を守り、 逆境の中でも前に進む力になる。

 

最後に──心は折れる前に守れる

競技者の心は、強さと脆さの両方を抱えている。 どれだけ実力があっても、どれだけ努力していても、 心が疲れてしまえば、前に進む力はすぐに細くなる。

逆境に潰されるのは、弱いからではない。 心が揺れるのは、甘いからでもない。 ただ、扱い方を知らないだけ。

心は、筋肉のように鍛えるものではない。 折れない鋼を目指す必要もない。 むしろ、しなやかに揺れながら戻ってこられるほうが、 競技者としてはずっと強い。

そのために必要なのは、 大きな覚悟でも、劇的な変化でもなく、 小さな習慣を、静かに積み重ねること。

朝のひとつ。 昼のひとつ。 夜のひとつ。 あなたの心を整える“自分だけのコーピング”を持つこと。

 

感情は必ず変わる。 反芻は必ず抜けられる。 状況は変わらなくても、行動は選べる。  思考は距離を置けば、ただの言葉に戻る。

そして、 あなたの心は、扱い方を知れば必ずしなやかになる。

逆境は避けられない。 ただ、潰されるかどうかは、今日から変えられる。

あなたの心を守る方法は、 もう手の中にある。 あとは、それを“使う”だけ。

是非、逆境に出くわす前に、ご自身の習慣に取り入れてほしい。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

コラム著者
プロスポーツメンタルコーチ上杉亮平
全てのアスリートが競技を楽しみ、自分らしさを輝かせる世界を創る。ことを目指し
「メンタルで視点(せかい)が変わる」この言葉胸にアスリートを自己実現へと導くサポートをしています。詳しくはこちら

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