スポーツメンタルコーチ上杉亮平
試合で力を発揮できないあなたへ、心の土台を整える伴走者
~アスリートを自己実現へと導く~
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弟と比べていた選手が気づいたこと──自信は日常から育つ

 

また「小さな一歩」の話です。

この上杉亮平のコラムを何度も読んでくださっている方は、またかと思われるかもしれません。そうです、また「小さな一歩」の話です。しつこいくらい出てきます。でも、それだけ大事なことだから、何度でも書きます。

「小さな一歩」と「習慣」は、私がスポーツメンタルコーチとして活動する上で大切にしている考え方です。今回は、実際に私が関わったある選手のエピソードを通して、その意味を深く掘り下げていきます。

 

「弟はすごいんです」

──自信が持てない選手との出会い

彼はいつも自分を卑下していました。 「弟はすごいんです」──それが口癖でした。

 

まるで、かつての自分を見ているようでした。

私自身も「兄はすごいんです」と口癖のように言っていた時期があります。

 

常に身近な存在と比べては、自分を小さく感じてしまう。

努力しても結果が出ないと「やっぱり自分はダメだ」と思い込んでしまう。そんな時期が確かにありました。

だからこそ、彼の言葉は痛いほど理解できました。身近な存在との比較は、時に自分を奮い立たせるきっかけにもなりますが、多くの場合は「自分には足りない」という思いを強めてしまうのです。

 

彼もまた、弟と比べては「自分はダメだ」と思い込み、何を始めても続かない。挑戦しても途中で飽きてしまう。そんな日々を繰り返していました。

彼の悩みは「継続できないこと」。しかし本質は「自分を信じられないこと」でした。 「どうせ続けられない」という思い込みが、挑戦する前から心を縛っていたのです。

 

そこで私は提案しました。 「毎日やることリストを作ってみよう」

最初に出てきた項目は「毎日体幹トレーニング3セット」「毎日朝5時起き」など、意欲的すぎるものばかり。まるで理想の自分を一気に手に入れようとするかのようでした。

 

そこで私は言いました。

「もっと簡単でいい。ほんの小さなことでいいから、自分との約束を作ってみよう」

彼は半信半疑でした。 「こんなんで本当にいいのか?」と。

その表情には、「こんな小さなことに意味があるのか」という疑念と、「もし本当に続けられたら…」というわずかな期待が入り混じっていました。私はその揺らぎこそが大切だと思いました。大きな挑戦ではなく、小さな一歩から始めることが、彼にとって“自分を信じる練習”になるからです。

 

小さな約束から始まった変化

彼が最初に選んだのは「朝起きたら水を飲む」「朝道具に触れる」といった、誰でもできるような些細な行動でした。

プラスで私からの提案で毎日、「小さな感謝」をメモして私に報告するということ。

 

最初は「こんなことで意味があるのか」と疑っていましたが、毎日続けてみると少しずつ変化が現れました。月に一度の振り返りで彼はこう言いました。

 「こんなに長く続けられたことがないです」「ちょっとできるかもと自信が持てるようになってきました」

さらに、今まで自分が当たり前のようにやってきたこと──決まった時間に食事をする、毎日練習する──も立派な継続だったと気づいたのです。

その気づきは彼にとって大きな転機でした。やることリストは次第に自発的に増えていきました。誰かに言われたからではなく、自分が「やりたい」と思って追加したのです。

 

自信は競技に直結しなくても育つ

このエピソードから伝えたいのは、自信は競技の成果だけで育つものではないということです。

 

  1. 小さな行動を続けることで「自分はできる」という感覚が育つ

 

  1. 日常の中にある「当たり前の継続」に気づくことで、自分を肯定できる

 

競技の結果は外的要因に左右されます。勝敗や記録は時に運や環境に影響される。しかし「小さな一歩」は誰にも奪えない、自分だけの積み重ねです。

私自身もスポーツメンタルコーチになる前は「継続力がない」と思っていました。でも今では、小さな一歩の仕組みを知ったことで、何でも続けられると思えるようになりました。

 

なぜ小さな一歩が大事なのか

──脳科学の視点から

脳は「達成の大きさ」を判断できません。脳科学の研究では、脳は「達成したという事実」に反応することが分かっています。

 

  1. 1時間の筋トレでも、1分のストレッチでも、達成感を感じる仕組みは同じ

 

  1. 小さな達成を繰り返すことで、脳内の報酬系が活性化し、モチベーションが高まる

 

  1. 継続することで「自己効力感(自分はできるという感覚)」が育つ

 

つまり、小さな一歩でも、脳は「できた」と認識し、それが自信につながるのです。

 

継続の本質は「気づくこと」から始まる

多くの人が「自分は何も続けられていない」と思い込んでいます。でも実は、

 

  1. 毎朝起きている

 

  1. ご飯を食べている

 

  1. 学校や職場に通っている

 

これらも立派な継続です。まずは「すでに続けられていること」に気づくことが、自信の第一歩になります。

 

新しい景色は、日常の中にある

今、自信が持てないと感じているあなたへ。

競技の成果だけが自信の源ではありません。

日常の中にある小さな一歩、当たり前にやれていること、それらを見つけてみてください。

そして、どんな些細なことでもいいので、新しい小さな一歩を作ってみてください。

 

それは「朝起きたら深呼吸する」でも、「寝る前にスマホを置いて目を閉じる」でも、「水を飲む」でも構いません。

大切なのは、自分との約束を守ること。それが続いたとき、あなたの中に「できた」という感覚が芽生えます。

その感覚こそが、自信の種です。 そしてその種は、やがてあなたの人生を支える根になります。

競技の結果に左右されない、自分自身の軸となる力。 それは、日常の中にこそ育つのです。

 

どうか、今まで気づかなかった「すでに続けていたこと」に目を向けてみてください。 そして、今日から始める新しい小さな一歩を、ぜひ実践してみてください。

その一歩の先に、きっと新しい景色が待っています。 あなたの自信は、もうすでに、あなたの中にあるのです。

 

そしてその自信は、誰かと比べる必要のない、あなた自身の歩みの中で育まれていくものです。 小さな一歩は、あなたの未来を変える力を持っています。 その力を、どうか信じてください。 あなたの挑戦は、もう始まっています。

 

そしてその挑戦は、あなた自身の人生を、自分の手で切り拓いていくという意思の表れです。 誰かの評価ではなく、自分との約束を守り続けること。 それこそが、真の自信であり、あなたらしい生き方の土台になるのです。 小さな一歩を、今日から始めてください。 その一歩が、あなたの未来を変えていきます。 私は、そう信じています。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

コラム著者
プロスポーツメンタルコーチ上杉亮平
全てのアスリートが競技を楽しみ、自分らしさを輝かせる世界を創る。ことを目指し
「メンタルで視点(せかい)が変わる」この言葉胸にアスリートを自己実現へと導くサポートをしています。詳しくはこちら

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