弱音は吐いてもいい──競技者の心に寄り添うスポーツメンタルコーチの在り方

競技の世界では、強さが求められます。 結果を出すこと、耐えること、前を向くこと。 だからこそ、「弱音を吐く=甘え」「弱音を吐く=負け」と思い込んでしまう選手も少なくありません。
でも、本当にそうでしょうか? 私は、そうは思いません。
弱音を吐けることは“心の強さ”でもある
「弱音を吐くことは甘えだ」 「そんなこと言ってる暇があったら練習しろ」 そんな言葉を、これまで何度も耳にしてきた方も多いのではないでしょうか。
しかし、心理学やメンタルヘルスの研究では、感情を言語化できる人ほどストレス耐性が高く、心の回復力(レジリエンス)も強いことがわかっています。 つまり、「もう無理」「つらい」と言葉にすることは、心を整えるための自然な行動であり、むしろ“強さ”の表れなのです。
感情は、感じた瞬間に無意識に身体に影響を与えます。 それを言葉にすることで、脳は「自分の状態を把握した」と認識し、ストレス反応を和らげる方向に働きます。 これは「ラベリング効果」と呼ばれ、科学的にも裏付けられたメンタル調整法のひとつです。
弱音は、逃げではなく、整えるための“呼吸”のようなもの。 吐き出すからこそ、また吸い込める。 その繰り返しが、競技者の心をしなやかに強くしていくのです。
競技者が弱音を吐けない理由
多くの選手が「弱音を吐いてはいけない」と思い込んでしまう背景には、 幼少期からの教育や、競技文化の影響があります。
「泣くな」「我慢しろ」「根性で乗り越えろ」── そんな言葉を繰り返し浴びて育つと、 「感情を出すこと=迷惑」「弱さを見せること=失敗」と刷り込まれてしまいます。
また、チームや指導者との関係性の中で、 「弱音を吐いたら信頼を失うのではないか」 「チームに迷惑がかかるのではないか」 と感じてしまう選手も少なくありません。
でも、感情を押し殺して競技を続けることは、心の摩耗を加速させるだけです。 一見、我慢しているように見えても、内側では疲弊が進んでいる。 そしてある日、突然折れてしまう。
私は、そんな選手を何人も見てきました。 だからこそ、「感情を出してもいい」と伝えることが、コーチとしての責任だと思っています。
正直な感情を話せる場所の価値
「辞めたい」「しんどい」「もう無理かもしれない」── そんな言葉を、安心して話せる場所があること。 それは、競技者にとっての“命綱”になることがあります。
私が目指しているのは、その命綱のような場所になること。 スポーツメンタルコーチとして、選手が本音を話せる“安全地帯”でありたい。
無理にポジティブに導くことはしません。 「前向きな言葉で上書きする」のではなく、 「今の気持ちをそのまま受け止める」ことを大切にしています。
それは、選手の心に寄り添うということ。 そして、その寄り添いが、次の一歩を生む土壌になると信じています。
無理に自分をだましても、続かない
「大丈夫」「頑張れる」と言い聞かせることは、時に必要です。 でも、それが“本音を隠すための言葉”になってしまったら、 それは自分をだますことになってしまう。
競技は、長い道のりです。 だからこそ、自分をだまし続けるやり方では、いつか限界が来る。
私は、選手に「無理にポジティブにならなくていい」と伝えます。 感情に蓋をするのではなく、まずはその感情を認めること。 それが、メンタルを整える第一歩です。
そして不思議なことに、感情を認めた瞬間から、心は少しずつ動き出す。 気づいたら、また走り出していた── そんな感覚を、選手には味わってほしいと思っています。
競技だけでなく、人生そのものが幸せになるように
私がスポーツメンタルコーチとして目指しているのは、 競技の結果だけでなく、その選手の人生が幸せになることです。
勝つことも大切。 でも、それ以上に「自分らしく競技に向き合えた」と思えることが、 選手にとっての誇りになると信じています。
競技は人生の一部。 だからこそ、競技を通して「自分を知る」「自分を整える」経験をしてほしい。 それが、競技を離れたあとも、その人の人生を支える力になると確信しています。
最後に伝えたいこと
もし今、「弱音は吐いてはいけない」「弱音を吐ける場所がない」と感じている方がいたら── どうか、その思いを一人で抱え込まないでください。 まずは体験コーチングからでも構いません。 お気軽にご相談ください。 あなたの“本音”が、また走り出す力になることを、私は信じています。
競技者にとって、心の強さとは「感情を押し殺すこと」ではありません。 むしろ、「正直な気持ちを言葉にできること」が、真の強さだと私は信じています。
だからこそ、弱音は吐いてもいい。 それは、前に進むための準備であり、心を整えるための自然な行動です。
スポーツメンタルコーチとして、 あなたの感情に寄り添い、あなたらしい競技人生を支える存在でありたい。 その想いを、これからもずっと大切にしていきます。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者