スポーツメンタルコーチ上杉亮平
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「何もしない時間」が競技力を高める──集中力・メンタル・脳科学から読み解く休息の本質

 

「何もしない時間」── 競技者にとって、この言葉はどこか罪悪感を伴う響きを持つかもしれません。 「休んでいる暇はない」「もっと努力しなければ」── そんな思考が染みついている人ほど、何もしない時間を“怠け”と捉えてしまいがちです。

しかし、脳科学やスポーツ心理学の観点から見ると、何もしない時間こそが、競技者のメンタルを整え、パフォーマンスを高めるための“戦略”であることがわかってきています。

 

脳の回復と整理が進む

──DMN(デフォルトモードネットワーク)の働き

人がぼーっとしている時、脳では「デフォルトモードネットワーク(DMN)」という領域が活性化します。 これは、内省・記憶の整理・感情の安定などに関わる領域で、脳のアイドリング状態とも言われます。

DMNが働いている時、脳は外部からの刺激を遮断し、過去の経験や感情を整理しながら、次の行動への準備を進めています。 つまり、何もしない時間は、脳が静かに“整えている”時間なのです。

競技者にとって、日々の練習や試合は膨大な情報処理の連続です。 その情報を統合し、意味づけし、次の判断に活かすためには、意図的な“空白”が必要なのです。

 

マインドフルネスとマインドワンダリング

──2つの心の状態

ここで重要なのが、「マインドフルネス」と「マインドワンダリング」という2つの心の状態です。

 

マインドフルネス:今この瞬間に意識を向ける状態

  1. 呼吸や身体感覚に意識を向けることで、雑念を手放し、心を“今ここ”に戻す。

 

  1. ストレス軽減・集中力向上・感情の安定などに効果がある。

 

  1. トップアスリートの多くが、ルーティンに取り入れている。

 

マインドワンダリング:意識が過去や未来に漂う状態

  1. ふとした瞬間に、過去の記憶や未来の想像に意識が向かう。

 

  1. 一見“雑念”に見えるが、創造性や直感を育てる重要な時間でもある。

 

  1. DMNが活性化している時に起こりやすい。

 

実は、私たちの一日の大半はマインドワンダリングの状態だと言われています。 だからこそ、この時間を「無駄」とせず、大切に扱うことが競技者のメンタルを整える鍵になるのです。

 

メンタルのリセット効果

──“頑張る”から一度離れる

競技者は常に「やるべきこと」に追われています。 練習、試合、分析、フィジカル管理── その中で、心は知らず知らずのうちに疲弊していきます。

何もしない時間は、“頑張る”から一度離れる時間です。 その時間が、心に余白を生み、再び前向きに取り組む力を育てます。

ストレスが蓄積した状態では、集中力や判断力が低下します。 だからこそ、意図的に“何もしない時間”を設けることが、競技者の質を守るために必要なのです。

 

創造性と直感が高まる

──“退屈”が生むひらめき

何もしない時間は、脳が“自由な思考”を始める時間でもあります。 この状態では、過去の経験や情報が結びつき、新しいアイデアや戦術のひらめきが生まれることがあります。

トップアスリートの中には、意図的に「何もしない日」を設けている人もいます。 それは、脳と心を“遊ばせる”ことで、競技に必要な創造性や直感を育てるためです。

 

集中力には限界がある

──“上げる”より“整える”という視点

競技中の集中力をどう高めるかにフォーカスしがちですが、人間の集中力には限界があります。

 

  1. 短期的には8秒程度(瞬間的な注意の持続時間)

 

  1. 中期的には45?90分(ウルトラディアンリズムによる集中と疲労のサイクル)

 

学校の授業時間が45分、大学の講義が90分で設計されているのも、脳の集中持続時間に基づいた科学的設計です。 つまり、集中力は“持続させるもの”ではなく、“波をつくるもの”。 その波の谷に「何もしない時間」を挟むことで、次の集中の質が高まります。

 

競技者にとっての「何もしない時間」の活かし方

スマホや情報から離れる時間をつくる

脳が本当に休まるには、外部刺激を減らすことが重要です。 通知やSNSから離れ、静かな時間を意識的につくることで、DMNが働きやすくなります。

 

予定を入れない日を意識的に設ける

練習や予定がない日を「罪悪感なく過ごす」ことが、メンタルの質を高めます。 “何もしない”ことを“する”日として、スケジュールに組み込むのも有効です。

 

“何もしない”を目的にする

ただ休むのではなく、「何もしない時間を持つこと自体が目的」として認識することで、心の回復効果が高まります。 これは、マインドフルネス的な「気づきの時間」としても活用できます。

 

まとめ

──空白があるから、また走り出せる

競技者にとって、「何もしない時間」は、怠けではありません。 それは、脳と心を整えるための“戦略的な余白”です。

外側の努力だけでなく、内側の余白をつくることで、 より強く、しなやかに競技に向き合えるようになります。

そしてその余白の中で、 自分の本音に気づいたり、 新しいひらめきが生まれたり、 「またやってみようかな」と思える瞬間が、 静かに育っていくのです。

競技者の皆さんへ── どうか、何もしない時間を、 “整えるための時間”として、大切にしてみてください。

 

過去のコラム:練習しない勇気—休息が強さを育むアスリートのメンタル戦略

こちらでもまた違った視点で休む事が大事だという事を綴っております。是非こちらも読んで参考にして頂ければと思います。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

コラム著者
プロスポーツメンタルコーチ上杉亮平
全てのアスリートが競技を楽しみ、自分らしさを輝かせる世界を創る。ことを目指し
「メンタルで視点(せかい)が変わる」この言葉胸にアスリートを自己実現へと導くサポートをしています。詳しくはこちら

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