スポーツメンタルコーチ上杉亮平
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「落ち込まない選手は強いのか?」

感情の揺れと成長フェーズを脳科学と実例で読み解く

 

 

「課題が見えてよかったです。強い相手とやれて楽しかったです。」

この言葉を聞いた瞬間、私は少し驚いた。 サポートしているある選手が、試合で思うような結果を残せなかった直後に口にした言葉だ。 彼にとっては、悔しさを感じてもおかしくない場面だった。 むしろ、過去の彼なら落ち込んでいたはずだ。 それでも今回は、前向きに捉えていた。

この変化は、単なる“ポジティブ思考”ではない。 それは、感情のフェーズが変わった証拠だった。

 

感情のフェーズとは何か?

人は、同じ出来事に対しても、その時の内面の成熟度や自己認識の深さによって、感じ方が変わる。 心理学ではこれを「情動調整能力」と呼び、成長とともに変化することが知られている。

このフェーズは、単なる“気分”ではなく、脳の働き・自己認識・経験値・環境の影響などが複雑に絡み合って形成される。

 

「課題が見えてよかった」「楽しかった」という感覚

この感覚は、客観的な視点が持てている状態を示している。 感情に飲み込まれず、冷静に「次に活かす」ことができる。 つまり、成長を“プロセス”として捉えられているということ。

 

このフェーズにいる人は、以下のような特徴を持つ:
  1. 自己肯定感が安定している

 

  1. 結果よりも成長に価値を置いている

 

  1. 感情を言語化できる

 

  1. 他者との比較よりも、自分との対話を重視している

 

  1. 「失敗=学び」と捉える習慣がある

 

これは、経験値がある人、またはメンタルコーチングなどで内省を深めてきた人に多く見られる。 感情を“情報”として扱えるようになると、感情に振り回されることが減っていく。

 

「悔しさで落ち込む」「自信を失う」という感覚

一方で、こちらの感覚も決して悪いものではない。 むしろ、感情のエネルギーが強く動いている状態であり、 自分の理想と現実のギャップに直面している証拠でもある。

この痛みが、次の行動の原動力になることもある。 「もっとやりたい」「変わりたい」という欲求が生まれるのは、悔しさがあるからこそ。

 

このフェーズにいる人は:
  1. 自分の可能性をまだ信じ切れていない

 

  1. 結果に強く影響される

 

  1. 他者との比較が多い

 

  1. 感情の言語化が難しいこともある

 

  1. 「失敗=自分の価値の否定」と捉えやすい

 

でも、それは通過点として必要なフェーズ。 ここを通るからこそ、次のフェーズに進める。

 

脳科学から見る感情の違い

脳科学的には、感情の揺れは「扁桃体」の活動と関係している。 落ち込むときは扁桃体が過剰に反応し、ストレスホルモン(コルチゾール)が分泌される。 一方、冷静に捉えられるときは「前頭前野」が活性化し、感情を調整する力が働く。

つまり、「落ち込まない=鈍感」ではなく、 脳が感情を整理できる状態にある=成熟しているということ。

また、ポジティブな感情が優位なときは「報酬系(ドーパミン)」が活性化し、 学習意欲や挑戦への意欲が高まることもわかっている。

 

どちらの感覚も“悪くない”

ここで大切なのは、どちらの感覚も成長の一部であるということ。 落ち込むことも、前向きに捉えることも、どちらも人間らしい。 そして、どちらのフェーズにいるかは、今の自分の状態を知る指標になる。

 

落ち込んでいるなら、それは「変わりたい」という欲求がある証拠。

 

前向きに捉えているなら、それは「変化を受け入れる器」が育っている証拠。

 

どちらも、次のステージに進むための大切な感覚だ。

 

フェーズの見極め方:自分は今どこにいる?

以下の問いを、自分自身に投げかけてみてほしい。
  1. 結果が出なかったとき、どんな感情が湧くか?

 

  1. その感情を、言葉にできるか?

 

  1. その感情を、誰かに伝えられるか?

 

  1. その感情を、次の行動に変えられるか?

 

これらの問いに答えることで、自分のフェーズが見えてくる。 そして、フェーズは固定されたものではなく、日々の意識と行動で変化していく。

 

コーチングの視点から見た感情の扱い方

スポーツメンタルコーチとして選手と関わる中で、 「落ち込まないことが正解」でも「悔しさが悪い」でもないと、何度も実感してきた。

むしろ、その選手が今どんなフェーズにいるかを見極めることが、関わり方の質を決める。

 

落ち込んでいる選手には、まず「感情の安全基地」をつくる。

 

前向きな選手には、「次の挑戦への設計図」を一緒に描く。

 

そして、どちらの選手にも共通して必要なのは、 「感情を否定しないこと」

 

最後に:感情は“敵”ではなく“味方”

今回の選手のように、前向きに捉える力が育ってきた選手を見ると、 感情は、向き合い続けることで、自然と整っていくものだと実感する。

そして、落ち込んでいる選手を見ると、 「その悔しさが、次の一歩になる」と信じて寄り添いたくなる。

感情は、敵ではない。 むしろ、成長の味方だ。

どんな感情も、あなたの未来に繋がっている。 だからこそ、今の感情を丁寧に感じて、言葉にしてみてほしい。

それが、次のフェーズへの扉になる。

感情を言葉にする習慣を

私が選手と関わる中で、大切にしていることのひとつが、 「感情を言葉にする習慣を育てること」だ。

言葉にすることで、感情は整理され、 整理されることで、行動に変わる。

そして行動が変わると、現実が変わる。

だからこそ、どんな感情も、 「感じて、言葉にして、動く」──この流れを大切にしてほしい。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

コラム著者
プロスポーツメンタルコーチ上杉亮平
全てのアスリートが競技を楽しみ、自分らしさを輝かせる世界を創る。ことを目指し
「メンタルで視点(せかい)が変わる」この言葉胸にアスリートを自己実現へと導くサポートをしています。詳しくはこちら

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