スポーツメンタルコーチ上杉亮平
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「こうなりたい」と「こうはなりたくない」──両方持つことで脳は加速する理由

 

「こうなりたい」と「こうはなりたくない」

──両方の未来を持つことの意味

「こうなりたい」 「こうは絶対になりたくない」

この両方を持つことが、目標達成のスピードを加速させる。 これは、脳科学や心理学の観点からも、しっかりと裏付けがある。

 

「こうなりたい」が脳を動かす仕組み

人は理想の未来を思い描くことで、脳内にドーパミンが分泌される。 ドーパミンは「報酬予測」に関わる神経伝達物質であり、 「達成できそう」「手に入りそう」と感じた瞬間に分泌される。

このドーパミンが出ることで、脳は“やる気モード”に切り替わる。 特に、脳の基底核にある「淡蒼球(たんそうきゅう)」という部位が活性化され、 行動を起こすエネルギーが生まれる。

つまり、「こうなりたい」と思うことは、脳にとって“報酬の予測”であり、 その報酬に向かって動き出すためのスイッチになる。

このとき、メンタルは前向きな状態になる。 「できるかもしれない」「やってみたい」という感情が湧き、 行動へのハードルが下がる。

 

「こうはなりたくない」が脳を動かす仕組み

一方で、「こうは絶対になりたくない」という感情も、脳を強く動かす。 これは「回避動機」と呼ばれるもので、危機や不快を避けるための行動を促す。

このとき脳内では、扁桃体が活性化される。 扁桃体は「恐怖」や「不安」に反応する部位であり、 その刺激が強いほど、脳は“回避行動”を優先するようになる。

たとえば、「試合でミスをしてチームに迷惑をかけたくない」 「このまま何も変わらなければ、自分は後悔する」 そんな思いが強いとき、脳はその未来を避けるために行動を起こす。

この回避動機は、決してネガティブなものではない。 むしろ、強い危機感は集中力や判断力を高めることがある。 「絶対に失敗できない場面」で、ゾーンに入るような感覚を経験したことがある人も多いはずだ。

 

理想だけでは行動力は高まらない

ここで重要なのは、「こうなりたい」だけでは行動力が高まらないということ。 理想の未来は、時に“遠すぎる”と感じられてしまう。 「いつかこうなれたらいいな」と思っても、今すぐ動く理由にはならない。

一方で、「こうはなりたくない」は、今すぐ動く理由になる。 危機感や不安は、行動の即時性を高める。 「今やらなければ、まずい」と思ったとき、人は動きやすくなる。

つまり、理想の未来は“方向性”を与え 避けたい未来は“推進力”を与える

この両方が揃ったとき、脳は最も強く働く。 そしてメンタルも、前向きさと緊張感のバランスが取れた状態になる。

 

「両方持つ」ことが脳を最適化する

脳科学では、報酬系と回避系の両方が活性化されるとき、 最も高い集中力と持続力が発揮されると言われている。

報酬系(ドーパミン)によって「やりたい」が生まれ、 回避系(扁桃体)によって「やらなきゃ」が生まれる。

この両方が同時に働くことで、脳は“最適な緊張状態”になる。 これは「覚醒水準」と呼ばれ、パフォーマンスに大きく影響する。

覚醒水準が低すぎると、やる気が出ない。 高すぎると、緊張しすぎてパフォーマンスが落ちる。 その中間、ちょうど良い緊張感があるとき、脳は最も効率よく働く。

「こうなりたい」と「こうはなりたくない」を同時に持つことで、 この覚醒水準が自然に整う。 だからこそ、両方のメンタルを持つことが、目標達成を加速させるのだ。

 

「こうはなりたくない」も、プラスに働く

多くの人は、「ネガティブな感情は持たない方がいい」と思いがちだ。 でも実際には、ネガティブな感情も、使い方次第で大きな力になる。

「こうはなりたくない」という感情は、 自分の価値観や大切にしているものを浮き彫りにしてくれる。 それは、自分の“軸”を確認するきっかけになる。

また、危機感があるからこそ、準備を怠らない。 「失敗したくない」という思いがあるからこそ、練習に集中できる。 それは、競技者にとっても、ビジネスパーソンにとっても同じだ。

ネガティブな感情を否定するのではなく、 それを“燃料”として使う。 それが、メンタルを強くする方法のひとつだ。

 

最後に

──両方の未来を持つことは、思考の幅を広げること

理想だけでは、遠くを見ているに過ぎない。 恐れだけでは、足元しか見えなくなる。 その両方を同時に持つことで、視野は広がり、思考は深まる。

「こうなりたい」と「こうはなりたくない」── この両極の感情を、どちらも大切にすること。 それが、脳を最適に働かせ、メンタルを安定させ、行動を加速させる。

目標達成に必要なのは、希望と危機感のバランス。 そしてそのバランスは、日々の選択と向き合い方で育てていける。

未来を描くときは、片側だけでなく、両側から照らしてみよう。 そのとき、あなたの行動は、より確かなものになる。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

コラム著者
プロスポーツメンタルコーチ上杉亮平
全てのアスリートが競技を楽しみ、自分らしさを輝かせる世界を創る。ことを目指し
「メンタルで視点(せかい)が変わる」この言葉胸にアスリートを自己実現へと導くサポートをしています。詳しくはこちら

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