すべての瞬間がチャンス──競技者の成長を支える認知の力

「これはチャンスだ」「これはピンチだ」──私たちは日々、目の前の出来事に意味を与えながら生きています。 でもその意味づけは、本当に“絶対的なもの”なのでしょうか?
周囲が「チャンスだ」と言っていることが、自分にとってはそう感じられないこともある。 逆に、周囲が「ピンチだ」と騒いでいる状況が、自分にとっては成長の好機に見えることもある。
つまり、チャンスとは“状況”ではなく、“認知”である。 この視点を持てるようになると、心に余裕が生まれ、行動の質も変わっていきます。 本コラムでは、「チャンスとは何か?」を心理学的・哲学的に掘り下げながら、実践的な思考法を紹介します。
チャンスとは何か?
辞書的には「物事を行うのに都合のよい機会」「好ましい結果につながる可能性のある瞬間」と定義されます。 しかし、心理学的にはもっと深い意味があります。
心理学者アルバート・バンデューラが提唱した「自己効力感(self-efficacy)」の理論では、
とされています。
つまり、同じ状況でも「自分ならできる」と思える人にはチャンスに見え、「無理だ」と思う人にはピンチに見える。 チャンスとは、外側の出来事ではなく、内側の認知によって決まるものなのです。
何がチャンスで、何がピンチなのか?
この問いに「絶対的な答え」はありません。 なぜなら、人はそれぞれ異なる価値観・経験・目標を持っているからです。
たとえば、
- 転職の機会を「キャリアの飛躍」と捉える人もいれば、「安定の喪失」と捉える人もいる。
- 試合での敗北を「終わり」と捉える人もいれば、「課題が見えた好機」と捉える人もいる。
-
このように、何をチャンスと捉え、何をピンチと捉えるかは“自分次第”なのです。
チャンスの本質は「自由な解釈」にある
周囲がチャンスだと思っていることが、必ずしも自分にとってのチャンスとは限らない。 逆に、周囲がピンチだと思っていることが、自分にとっては大きな転機になることもある。
この視点を持てるようになると、
- 周囲の評価に振り回されなくなる
- 自分の価値観で判断できるようになる
- 心に余裕が生まれる
つまり、チャンスとは「自分がそう思った瞬間に生まれるもの」であり、そこには自由がある。 この自由を手にしたとき、人はより柔軟に、しなやかに生きられるようになるのです。
どうすればチャンスと捉えることができるか?
チャンスを捉える力は、生まれ持った性格ではなく、認知の習慣によって育てることができます。 そのためには、以下の3つの視点を意識することが重要です。
1. 「意味づけ」を意識する
出来事に対して「これは何を意味するのか?」と問い直す習慣を持つこと。 失敗=終わりではなく、失敗=学びと捉えることで、チャンスに変わります。
心理学ではこの力を「認知的再評価」と呼びます。 同じ出来事でも、意味づけを変えることで感情の質が変わり、行動の選択肢が広がるのです。
たとえば、試合で負けた時── 「自分は弱い」と意味づければ自己否定に陥りますが、 「今の自分の限界が見えた」と意味づければ、課題が明確になり、次の挑戦への意欲が湧いてきます。
2. 自己効力感を高める
「自分ならできる」という感覚を育てることで、困難な状況もチャンスに見えるようになります。
自己効力感は、以下のような要素で高めることができます。
- 小さな成功体験の積み重ね
- 周囲からの励ましやフィードバック
- 過去に乗り越えた経験の振り返り
この感覚があると、「ピンチ=試されている場面」「困難=成長の前兆」と捉えることができるようになります。 つまり、自己効力感は“チャンスを見抜く目”を育てる土壌なのです。
3. 視点を変える
「この状況を別の角度から見たらどうなるか?」と問いかける習慣を持つこと。
たとえば──
- 「時間がない」=「集中力が高まる環境」
- 「失敗した」=「改善点が明確になった」
- 「周囲に評価されない」=「自分の価値観を貫けるチャンス」
視点を変えることで、ネガティブな状況にもポジティブな可能性が見えてきます。 これは、認知の柔軟性とも呼ばれ、レジリエンス(心理的回復力)を高める重要な要素です。
最後のメッセージ
チャンスとは、状況ではなく“自分の捉え方”によって生まれるもの。 周囲の評価に左右されず、自分の視点で意味づけを選べる人は、どんな場面でも可能性を見出せる。
そしてその視点は、心に余裕を生み、行動の質を高め、人生の選択肢を広げてくれる。 「これはチャンスかもしれない」と思えた瞬間が、すでにチャンスの始まりなのです。
でも、もっと言えば── 生きていること自体が、すでにチャンスなのかもしれません。 今日も呼吸ができている。 競技に取り組めている。 悔しさを感じるほど、何かに本気になれている。
それは、誰かに与えられたものではなく、あなた自身が選び続けてきた証です。 その選択の積み重ねが、今のあなたをつくり、これからのあなたを育てていく。
だからこそ、どんな状況であれ── 「これはチャンスだ」と思えた瞬間が、あなたの人生を動かす起点になる。 それは、誰にも奪えない“自由”であり、“力”なのです。
その力を、あなた自身の手で掴み取り、次の瞬間へ踏み出してほしい。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者