心の土台をつくるストレッチ──競技力を支える静かな力

ストレッチは“心”にも効く
「ストレッチ=身体のケア」 そう思っている人は多いかもしれません。 でも実は、ストレッチはメンタルを整えるためにも非常に効果的な習慣です。
競技者にとって、心の状態はパフォーマンスに直結します。 その心を整える手段として、ストレッチは“静かで確かな力”を持っているのです。
ストレッチがメンタルに与える科学的な影響
自律神経を整える
ストレッチは副交感神経を優位にし、心身をリラックス状態へ導きます。 特に深い呼吸を伴うストレッチは、緊張や不安を和らげる効果があります。
セロトニンの分泌を促す
ストレッチなどの軽い運動は、脳内の「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌を促します。 これにより、気分の安定や前向きな感情が生まれやすくなります。
“今ここ”に戻る
ストレッチは、身体の感覚に意識を向ける行為。 これはマインドフルネスと同様に、過去や未来への思考から離れ、今この瞬間に集中する効果があります。
競技者にとっての“心のウォームアップ”
試合前、練習前、あるいは日常の中で── ストレッチは、身体だけでなく心の準備にもなります。
- 緊張をほぐす
- 呼吸を整える
- 自分の感覚に戻る
- 感情の揺れを静める
これらはすべて、競技者にとって“整える力”につながるものです。
習慣化することで“自己効力感”が育つ
毎日ストレッチを続けることで、「自分は整える力を持っている」という感覚が育ちます。 これは、メンタルの土台となる自己効力感(セルフエフィカシー)の向上につながります。
ストレッチの“メンタル効果”を高めるポイント
呼吸とセットにする
深くゆっくりとした呼吸を意識することで、副交感神経がより働きやすくなります。
意識を身体に向ける
「今、どこが伸びているか」「どんな感覚があるか」を感じることで、思考のノイズが減ります。
感情の整理に使う
イライラしたとき、落ち込んだとき、ストレッチを通じて“身体から整える”ことができます。
実際に取り入れている選手の声
──大坂なおみ選手の例
テニスプレイヤーの大坂なおみ選手は、試合前のルーティンとして静的ストレッチと深呼吸をセットで行うことを公言しています。 彼女は「試合前に心を落ち着けるために、身体をゆっくり伸ばす時間が必要」と語っており、 ストレッチを通じて自分の感覚に戻ることが集中力の鍵になっていると述べています。
このように、ストレッチは“心のリセットボタン”として機能することがあります。 トップアスリートほど、身体と心のつながりを大切にしているのです。
どんなストレッチが効果的か?
静的ストレッチ(スタティックストレッチ)
- ゆっくりと筋肉を伸ばし、20?30秒キープする
- 呼吸を深くしながら行うことで、副交感神経が優位になる
- 特に首・肩・股関節まわりは、感情と連動しやすく効果的
動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)
- 軽いリズム運動を伴うストレッチ
- 朝や試合前など、交感神経を活性化したい場面に有効
- 心を“前向きモード”に切り替えるスイッチとして使える
マインドフルネスストレッチ
- 呼吸と身体感覚に意識を向けながら、ゆっくりと動く
- 感情の揺れを整えたいとき、思考を静めたいときにおすすめ
どんな競技者に取り入れてほしいか?
メンタルの波が激しい選手
緊張しやすい、感情の揺れがプレーに影響する → ストレッチで“心のベース”を整える習慣を
自分の感覚に戻るのが苦手な選手
周囲の目や評価に左右されやすい → 身体感覚に意識を向けることで、自己軸を育てる
試合前に不安が強く出る選手
呼吸が浅くなる、頭が真っ白になる → ストレッチ+深呼吸で“今ここ”に戻る力を育てる
最後に
──整える力は、身体からも育てられる
私は、選手のメンタルを整えるために、言葉や思考だけでなく、身体の感覚にも目を向けることを大切だと思っています。 ストレッチは、そのための“静かな習慣”です。
心が揺れたとき、試合前の緊張時、日々の習慣として
どんな場面でも、ストレッチは「整える力」を育ててくれます。
競技者にとって、メンタルは技術と同じくらい重要な“土台”。 その土台を、身体からも支える
そんな視点を持つことで、より深く、より強く、自分自身と向き合えるようになるはずです。
是非自分に合ったストレッチ方法を見つけ出してみてください。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者