他人をほめる力が自分を強くする
競技者のための“自信の循環”メンタル術

「自信は、与えることで育つ」
競技者にとって「自信」は、技術や体力と並ぶ重要な土台です。 しかし、自信を“自分の中だけで育てよう”とする人は多く、結果として孤独な努力に陥りがちです。
実は、自信は「他人に与えることで、自分にも返ってくる」性質を持っています。 このコラムでは、他者への称賛が自分のメンタルをどう育てるかを、科学的根拠と実践例を交えて解説します。
アイヴァン・ジョーゼフ博士の「自信はスキルである」理論
カナダのスポーツ心理学者であり、元ライアソン大学サッカー部監督のアイヴァン・ジョーゼフ博士は、TED Talkでこう語っています。
博士は、選手の自信を育てるために「ポジティブなフィードバックを意図的に増やす」ことを徹底しました。 彼のチームでは、練習中に選手同士が互いをほめる時間を設け、称賛の言葉を習慣化。 結果として、チームの結束力と個々のパフォーマンスが飛躍的に向上したのです。
他人をほめることで起こる“心理的な連鎖反応”
他人をほめる行為は、単なる礼儀ではありません。 脳科学的には、以下のような反応が起こります:
オキシトシンの分泌
称賛や感謝の言葉を交わすことで、脳内に「絆ホルモン」と呼ばれるオキシトシンが分泌されます。 これは安心感や信頼感を高め、ストレス耐性を向上させる効果があります。
ミラー効果(Mirror Neuron)
他人の喜ぶ姿を見ることで、自分の脳も“喜び”を模倣します。 つまり、他人にポジティブな感情を与えると、自分の脳もポジティブに反応するのです。
自己肯定感の強化
「誰かを認めることができる自分」への肯定感が、自信の土台になります。 これは“自分は価値ある存在だ”という感覚を育てる重要な要素です。
実践例
──競技者が称賛を習慣化する方法
1. 練習後に「今日の良かった点」を伝える
チームメイトに対して、「今日のあのプレー、すごく良かった」と具体的に伝える。 ポイントは“事実+感情”で伝えること。例:「あのパス、タイミング完璧だった。見てて気持ちよかった!」
2. 自分のSNSで仲間を称賛する
試合後の投稿で、自分の活躍だけでなく仲間の貢献にも触れる。 これは周囲への信頼感を育てると同時に、自分の視野の広さも育てます。
3. 自分にも称賛を向ける
鏡の前で「今日もよくやった」と言葉にする。 アイヴァン博士も「自分にポジティブな言葉をかける習慣」を推奨しています。
他人への称賛が“自分の成功”に返ってくる理由
称賛を習慣化すると、周囲との関係性が変わります。 信頼が生まれ、応援される存在になり、チームの中での役割も広がります。
そして何より、「自分が誰かの自信を支えられる存在だ」という感覚が、 自分自身の価値を実感させてくれるのです。
これは競技者にとって、技術以上に重要な“心の軸”になります。
自信は“循環するエネルギー”である
自信は、閉じた空間で育てるものではありません。 誰かを認め、支え、称賛することで、巡り巡って自分の中に返ってくる。 それは、まるで呼吸のようなもの。吐き出すことで、深く吸い込める。
競技者としての成長は、技術だけでなく、こうした“心の循環”を意識することで加速します。
最後に
──あなたの一言が、誰かの自信になる
今日、誰かに「よかったよ」と伝えてみてください。 その一言が、相手の自信を育て、あなた自身の心にも静かに力を与えてくれるはずです。
そして、あなたが誰かを認める姿勢は、 あなた自身が「信じるに値する存在」であることを証明してくれます。
次の一歩へ
このコラムを読んで「自分も称賛を習慣にしたい」と感じた方へ。 まずは、今日の練習後に仲間の良かった点を一つ、言葉にしてみてください。 それが、あなたの自信を育てる第一歩になります。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者