選手の成長を感じた日──報告の中に見えた“心の変化”

報告の言葉が変わった日
「今日はここがダメだった」「全然できなかった」 そんな言葉を聞くことが多かった選手が、ある日こう言った。
「今日はここができた」 「次はこうしてみる」
その瞬間、私は静かに感動した。 報告の“質”が変わったのだ。 それは、メンタルコーチングを重ねてきた選手の、内面の変化の証だった。
選手の報告は「心の鏡」
競技者が試合や練習を終えた後に語る言葉は、 そのまま“自己認識”の表れだ。
- ダメだったことばかりを並べる選手は、自己否定の癖が強い
- できたことを見つけられる選手は、自己肯定感が育っている
- 改善策を自ら語れる選手は、自己効力感が高まっている
報告の中身は、技術の話ではない。 「自分をどう見ているか」の話なのだ。
実例──報告が変わった選手の成長
ある競技者は、最初の頃こう言っていた。
「全然ダメでした」 「何もできませんでした」 「課題しか見つかりません」
でも、メンタルコーチングを重ねる中で、少しずつ変化が起きた。
「今日はここができた」 「次はこうしてみる」 「この部分は改善できそうです」
私が何かを聞く前に、自分で“できたこと”と“次の一手”を語るようになった。 それは、自己肯定感と自己効力感が育ってきた証だった。
科学的根拠
──「できたこと」に目を向けると脳が変わる
心理学では、ポジティブな自己認識が脳の働きに好影響を与えることが知られている。
自己肯定感と脳の報酬系
- 自分の成功体験やできたことを認識すると、脳内の報酬系が活性化
- ドーパミンが分泌され、モチベーションと集中力が高まる
- 小さな成功でも繰り返すことで、自己効力感が強化される
脳は成功の“大小”を判断できない
- 脳は「成功した」という事実に反応するが、それが大きいか小さいかは判断できない
- 小さな成功でも「できた」と認識することで、報酬系が活性化し、次の行動への意欲が高まる
つまり、「できたこと」を探す習慣は、脳にとって“成功の連鎖”を生む
この科学的背景があるからこそ、 「できたことを探す」ことは、競技者の脳と心にとって最も効果的な習慣なのだ。
なぜ「できたこと」を探すのか?
私がメンタルコーチとして大切にしている価値観のひとつが、 「どんなに納得のいかない出来でも、必ず“できたこと”を探す」ということ。
なぜなら──
- どんなにダメな日でも、必ず何かはできている
- それを見つける力が、自己信頼の土台になる
- 自分を認める習慣が、次の行動を支える
「できたこと」を見つけるのは、甘やかしではない。 “自分との約束”を守るための、静かな誇りなのだ。
なぜ「次どうするか」を考えるのか?
もうひとつ大切にしているのが、 「課題やダメだったところではなく、“次どうするか”を考える」という視点。
なぜなら──
- 終わったことを責めても、何も変わらない
- 反省よりも、改善の方が脳にとって前向きな刺激になる
- 明日を変えるのは、今日の“次の一手”だけ
課題を並べるより、改善策を語る。 それが、競技者としての“思考の質”を高める。
あなたは今日、何が「できた」と言えるだろう?
このコラムを読んでいるあなたへ。 今日の練習や試合、日常の中で──
- どんな小さなことでも「できた」と言えることは何ですか?
- それを、誰かに報告するとしたら、どんな言葉を使いますか?
脳は成功の大小を判断できません。 だからこそ、小さな「できた」を見つける習慣が、あなたの競技人生を支えてくれます。
メンタルコーチングが育てる「報告の質」
メンタルコーチングは、技術を教える場ではない。
“自分との対話の質”を育てる場でもある。
- 自分をどう見ているか
- 自分に何を許しているか
- 自分に何を期待しているか
報告の言葉が変わるとき、選手の内面は確実に変化している。 それは、競技力の変化よりも深く、長く、強い。
最後に
──報告の言葉が変わると、競技人生が変わる
もし今、
- 報告がネガティブになりがち
- 課題ばかりが目につく
- 自分を責める癖がある そんな感覚があるなら──
まずは、「今日できたこと」を探してみてほしい。 そして、「次どうするか」を自分の言葉で語ってみてほしい。
それだけで、競技者としての“軸”が少しずつ育っていく。 報告の言葉は、心の鏡。 その鏡を、少しずつ磨いていこう。
私、上杉亮平は、競技者の“心の土台”を育てるために、 日々、言葉と対話を通じて選手に寄り添いながらサポートしています。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者