自信がない競技者へ──小さな一歩が脳を変える成功の科学

はじめに──「聞いたことある話」こそ、深く知ってほしい
こんにちは。プロスポーツメンタルコーチの上杉亮平です。
私のコラムを読んでくださっている方は、 「小さな一歩が大事」「小さな成功体験の積み重ねが大事」──そんな言葉を何度も目にしているかもしれません。
でも今回は、その“なぜ”に踏み込みます。 なぜ小さな一歩が自信につながるのか? なぜ小さな成功が脳に効くのか? そして、どうすればそれを日々の競技生活に活かせるのか?
聞いたことのある言葉かもしれませんが、ぜひ最後まで読んでみてください。 あなたの「自信がない」を変えるヒントが、ここにあります。
自信は「脳の記憶」でできている
まず前提として、自信とは「感覚」ではなく「記憶」です。 脳が「自分はできる」と認識しているかどうか。 つまり、自信とは“脳の中にある成功体験の記録”なのです。
そしてここが重要なのですが── 脳は、成功の「大きさ」を判断できません。
たとえば、日本代表に選ばれた成功も、 今日の練習でできなかったことができた成功も、 脳にとっては「成功」として同じように記録されます。
つまり、小さな成功でも、脳はしっかり“できた”と認識するのです。
小さな成功が「ドーパミンサイクル」を回す
小さな成功を経験すると、脳内ではドーパミンが分泌されます。 このドーパミンは、モチベーション・集中力・学習能力を高める“報酬物質”です。
そして、ドーパミンが分泌されることでパフォーマンスが上がり、 さらに成功体験が増える──このループが「ドーパミンサイクル」です。
このサイクルが回り始めると、 小さな成功 → 快感 →やる気 →成功 →快感…という好循環が生まれます。
つまり、自信を育てるには「小さな成功」を繰り返すことが最も効果的なのです。
小さな成功を見つける力
では、どうすれば小さな成功を見つけられるのか? ポイントは、「できたこと」に目を向ける習慣です。
たとえば──
- 昨日よりも1本多くシュートが入った
- 苦手なメニューを最後までやり切れた
- 緊張したけど、声を出してプレーできた
こうした小さな成功を、意識的に「記録」していくことで、 脳は「自分はできる」と少しずつ認識を変えていきます。
おすすめは、練習後に「今日できたこと」を3つ書き出すこと。 どんなに小さなことでも構いません。 重要なのは、それを「成功」として認識し、自分を褒めることです。
小さな一歩を設定する力
小さな成功を積み重ねるには、大きな目標に向かって、小さな一歩を設定することが欠かせません。
「日本代表に入って活躍する」「海外リーグで結果を残す」「バロンドールや世界最優秀選手に選ばれる」── そんな大きな目標を持つこと自体は、素晴らしいことです。 むしろ、目標は大きいままでいい。
大切なのは、その目標に向かって「今日、自分にできる最低限の行動は何か?」を考えること。 脳は、達成までの距離が遠すぎるとやる気を失いやすい性質があります。 だからこそ、今の自分でもすぐに実行できる小さな一歩を設定することで、 脳は「できた」と認識し、ドーパミンを分泌し、やる気と集中力が高まっていきます。
たとえば──
- 「練習前に深呼吸を3回する」
- 「今日は1回だけでも声を出す」
- 「苦手なメニューに1秒だけ長く向き合う」
こうした行動は、すぐに実行できて、成功体験につながります。 そして、脳はその成功を「できた」と記録し、自信の土台が少しずつ育っていくのです。
SMART原則で行動を設計する
小さな一歩を設定する際は、SMART原則が役立ちます:
S(Specific)具体的:「何を、いつ、どこで、誰と」
M(Measurable)測定可能:「何回、何分、どれくらい」
A(Achievable)達成可能:「今の自分でもできる」
R(Relevant)関連性:「自分の目標とつながっている」
T(Time-bound)期限あり:「今日、今週、今月」
この原則に沿って行動を設計すれば、 小さな成功を積み重ねやすくなり、ドーパミンサイクルが自然に回り始めます。
自信は「つくるもの」であり「育てるもの」
自信は、待っていても自然に湧いてくるものではありません。 誰かに褒められても、一時的には高まっても、長続きしない。 だからこそ、自信は「自分でつくるもの」であり、「育てるもの」なのです。
そしてその方法は、すごくシンプルで簡単です。 小さな一歩を設定し、小さな成功を見つけて、記録する。 それだけで、脳は「自分はできる」と認識を変えていきます。
最後のメッセージ
──競技者のあなたへ
もし今、「自信が持てない」と感じているなら── それは、あなたに才能がないからではありません。 ただ、脳に「成功の記録」が足りていないだけです。
だからこそ、今日の練習でできたことを、ひとつだけ思い出してください。 それが、あなたの自信の第一歩になります。
スポーツメンタルコーチとして、私はそんな“小さな一歩”を一緒に設計し、 “小さな成功”を一緒に見つけていくサポートをしています。
自信は、積み重ねでつくれる。 そしてその積み重ねは、今日から始められます。
もし今、それでも「一人では難しいかもしれない」と感じているなら── いつでもあなたのペースに寄り添いながら、 一緒に小さな成功体験を積み重ねていける準備を整えています。
必要なときに、必要なだけ。 そんな関わり方を、必要なタイミングで選んでもらえたらと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者