情報に振り回されない心の整え方|競技者が感性を軸に強くなる習慣

試合前になると、不安を減らすために情報を集める── でも、集めれば集めるほど、不安が強くなってしまうことはありませんか?
データや他者の評価を信じすぎて、自分の感覚を見失ってしまっていませんか?
「どうメンタルを整えればいいか分からない」「何を基準に動けばいいのか分からない」 そんな迷いが続いている中で、自分らしいプレースタイルにも違和感がある── そんな状態が続いている方にこそ、このコラムは届けたい。
もしかすると、あなたの“感性”が、本来の力を発揮する準備を始めているかもしれません。
情報は「武器」にも「負荷」にもなる
現代の競技者は、かつてないほど多くの情報に囲まれている。 試合データ、相手分析、SNSの評価、トレーニング理論── それらは役に立つ道具である反面、「こうすべき」という圧力を生みやすい。
情報は、適切に扱えば心の整理に役立つ。 しかし、過剰に頼ると“思考過多”に陥り、感性が働きづらくなるのだ。
競技とは「自分の感覚を信じて動くこと」。 感性こそが、競技者にとって最も本質的なナビゲーションである。
情報過多がメンタルに与える影響
脳が情報処理に過剰に使われると、 ストレスホルモン(コルチゾール)が分泌され、集中力や判断力が低下する。
- 選択肢が増えすぎることで「迷い」が生まれる
- 何を選んでも「他の方がよかったかも」と満足感が下がる
- データや他者の評価に依存すると、自分のプレーへの納得がなくなる
つまり、情報は「使うもの」であって、「頼りすぎるもの」ではない。
感性がもたらすストレス耐性
感性とは、「自分の内側から湧き上がる感覚」。 経験・直感・身体の声・心の動き──これらが統合された“自分だけのセンサー”。
この感性を活かすことで、競技者は以下のようなメンタル的強さを身につけていく
自己効力感が高まる
「自分で感じて、自分で決める」経験が、自信を育てる。 外の評価ではなく、自分の納得が心を安定させる。
ノイズを自然に遮断できる
感性が育つと、「今必要な情報」と「今はいらない情報」が、直感的に見分けられる。 これは、脳と心を守るフィルターのような働きをする。
自分らしさがプレーに現れる
データや理論ではなく、「自分の納得」によってプレーすると、競技が楽しくなる。 これは、継続力や回復力の原動力にもつながる。
実話:長友佑都選手が「感性」に切り替えた瞬間
セリエAのインテルで活躍していた長友佑都選手。 戦術理解と分析に重点を置く中で、ある時期から「考えすぎて動けない」「自分らしさが失われている」と感じ始めたという。
そこで彼は、情報から“自分の感性”へとシフトすることを選んだ。
「どれだけ情報があっても、最後に頼れるのは、自分の身体と心。感性に従うことでプレーが戻ってきた」
この転換により、判断の迷いが減り、集中力が高まり、 何より“自分らしさ”がプレーに戻ってきたと語っている。
情報は手段。 そして、“感性こそが本質”──この体験が、彼のメンタルと競技を整えていった。
感性を育てる3つの習慣
- 1. 「情報を見ない時間」を意識的に設ける
SNSや分析データから離れ、自分の呼吸や感覚に意識を向ける時間をつくる
- 2. 感覚を言葉にする習慣を持つ
「今日はなぜ調子が良かったか」「何を感じながらプレーしていたか」などを言語化することで、感性が整理されて育つ
- 3. 評価より“納得”を基準にする
結果ではなく、「納得できたかどうか」「自分らしくできたかどうか」を基準にすると、ストレスに強くなる
最後に──情報と感性のバランスが、競技者の土台をつくる
情報は、競技者にとって重要な武器。 しかし、それを使いこなすためには、感性という軸が必要になる。
外の声に引っ張られている時こそ、内なる感覚に戻ってみよう。 プレッシャーに押されそうな時こそ、自分の心に問いかけてみよう。
感性を活かせる競技者は、 結果だけでなく「プロセス」を楽しめる。 そして、競技そのものが「自分らしく生きる場所」へと変わっていく。
あなたの中にあるその感覚こそが、未来を整える力になる。
コラム著者