「自分軸」と「固執」の違い──競技者の心をしなやかに保つメンタル習慣

「自分の考えは間違っていないはずなのに、どうしてこんなに心が疲れるんだろう」 そんなふうに感じることはありませんか?
正しいと思って選んだのに、納得できなかった。 自分らしく動いたつもりが、気づけば誰かの期待に縛られていた。 それはきっと、“自分軸”のつもりで“正しさ”の枠に絡め取られていたのかもしれません。
本当の自分軸は、「正しさ」ではなく「納得」と「余白」から生まれるもの。 この文章では、その“しなやかな芯”の育て方を、静かに紐解いていきます。
「自分軸」って、何を指すのか?
多くの人が「自分軸を持ちたい」と口にします。 それは、自分の意見や価値観を信じる姿勢であり、外の評価に振り回されずに生きる力。
でも実は、「自分の意見が正しい」と思っているだけでは、本当の自分軸とは言えない場合もあるのです。
なぜなら、自分軸とは「自分の納得」を軸に動くことであり、 変化を拒まず、柔らかく自分と向き合う力を含んでいるからです。
自分軸と固執の違いは「柔らかさ」と「余白」にある
自分軸とは、「自分の価値観や納得感をもとに動くこと」。 そして、必要に応じて見直すこともできる柔軟性を含んでいます。
一方、固執は、「変えたくない」ではなく「変えられない」という感覚に近い。 他者の意見を否定したり、新しい可能性に心を閉ざしてしまうと、 それは“信念”ではなく、“不安から生まれる守り”になってしまうのです。
自分軸には、揺れても戻れる余白としなやかさがある。 固執には、揺れた瞬間に崩れてしまう硬さと閉鎖性がある。
だからこそ、強い心には“柔らかさ”が必要で、 自分軸を育てるということは、選べる力と手放す力の両方を磨いていくことなのです。
競技者にもよくある「自分軸のような固執」
競技者は、自分のスタイルや経験に誇りを持っています。 その姿勢は強さの源でもあります。
しかし── 「昔はこれで勝てたから変えたくない」 「周りが何を言っても、自分のやり方が一番だ」 そんな考えが強くなりすぎると、柔軟な適応力が失われてしまいます。
これは一見、自分軸のように見えて、実は“結果に縛られたこだわり”から生まれる固執であることもあります。 プレーの幅が狭くなったり、周囲との関係性が硬直化することにもつながります。
実話:松岡修造さんが語る「受け入れる強さ」
元テニス選手・松岡修造さんは、若い頃、自分のプレースタイルや感性に強いこだわりを持っていました。 けれど世界と戦う中で、「そのこだわりが自分を縛っている」と気づき、変化を受け入れることを決意したといいます。
「自分の感性を信じることと、変化を受け入れることは矛盾しない。 むしろ、芯があるからこそ揺れられる。それが本当の強さだと思う。」
この言葉には、「自分軸の強さ」と「柔らかさ」の両方が宿っています。
しなやかな自分軸を育てるための3つの問い
- この選択は「誰かの正解」ではなく「自分の納得」から生まれているか?
- 他者の意見を一度受け止める余白を、自分の中に持てているか?
- 今の状況において、どんな変化が自分に必要かを見つめ直せているか?
これらの問いを日々自分に投げかけていくことで、 “強くてしなやかな軸”が育まれていきます。
最後に──本当の芯は、揺れても戻れるもの
固執は、変化を拒む安心感かもしれません。 でも、自分軸は、揺れながらも戻れる力であり、 変化の中でも自分らしさを失わない、深い安心感をくれるものです。
競技者として、何かを貫く力は大切。 でもそれ以上に、「必要なら見直せる自分でいられること」が、 長く競技を続けるための心の土台になります。
あなたのこだわりが、柔らかくなった時── それは、誰にも負けない“芯”になる。