支える技術よりも整える習慣─スポーツメンタルコーチとして大切にしている“在り方”

スポーツメンタルコーチとして日々選手と向き合う中で、最近よく思うことがあります。 サポートの質を高めるために必要なのは、“知識”でも“テクニック”でもなく、 「この人なら支えてほしい」と思ってもらえるような、“在り方”だということです。
どんな声かけが正しいのか?どんな方法が一番効果的なのか?── そんな技術論を磨くことももちろん大切です。 だからこそ、自分自身の姿勢や空気感によって、 「心を預けたい」と思ってもらえるかどうかの方が、関係性においては圧倒的に重要だと感じています。
サポートする側の「気持ち」が強すぎるとき
正直に言えば、私自身も「この選手を支えたい」という気持ちが強くなるあまり、 気づかないうちに“求めすぎる”ような関わり方になってしまったことがあります。
- もっと課題に向き合ってほしい
- もっと話してほしい
- なぜ相談してくれないのか?
そんな風に、関係が“成立している感覚”を求めてしまうと、 いつの間にか選手を“管理しよう”とする関係になってしまいます。 心理学的には、これは「支配的関係」へと傾く危険性があるとも言われています。
だけど選手は、監視されるよりも「理解されたい」と思っているし、 指示されるよりも「自分のタイミングを尊重してほしい」と願っています。 そんな心の動きを大切にしたいと私は思っています。
サポートされたいと思ってもらうために、私がしていること
私が意識していることは、“関わる前に、自分と向き合う時間を持つこと”です。
- 自分の承認欲求に気づくこと
- 関係の中で起きた違和感や感情をそのままにしないこと
- 「なぜこの言葉をかけたいのか?」を問い直すこと
- 情報を伝える前に「安心できる空気」をつくること
選手の心に届く言葉をかけたいなら、 「まずは自分が整っているか」という前提を確認することが大事だと思っています。
脳科学的にも、安心できる相手と接しているときに分泌される“オキシトシン”は、 信頼と本音の開示に深く関係していると言われています。 だからこそ、「この人になら話してもいいかも」と思ってもらえる空気を、 日々の言葉や態度で育てていくことが、コーチとしての大切な仕事なのだと感じています。
日々、自分の姿勢を育てるということ
私は、選手との対話の中で「どんな自分でいたいか?」を問い続けています。 実績ある指導者の方と話す機会を積極的につくることも意識していますし、 “すごい人”を真似するのではなく、「その人柄はなぜ信頼されるのか?」を観察するようにしています。
同時に、知識のアップデート以上に、感情や姿勢のメンテナンスを大事にしています。 自分の整え方に意識的になれば、自然と選手に対しても、 「成果」ではなく「過程」や「余白」を見つめられるようになるからです。
最後のメッセージ
「この人にサポートしてもらいたい」と思ってもらうこと。 それは、スポーツメンタルコーチにとっての最大の信頼だと思っています。
私はその信頼にふさわしい存在でありたいし、 「この人なら一緒に前に進める気がする」と思ってもらえるように、 自分自身の心との対話を、これからも丁寧に続けていきます。
サポートしたいと思う気持ちだけでは届かない時に── いちど、こう問いかけてみます。
自分は、今この選手にとって「話したくなる存在」だろうか?
その問いに静かに向き合えることが、 私にとってのスポーツメンタルコーチとしての在り方であり、支える技術だと思っています。
コラム著者