選手のためになる嘘──思い込みがパフォーマンスを変える瞬間

嘘は悪なのか? それとも、選手を救う武器なのか
「嘘はよくない」 誰もがそう教わってきた。
だけど、競技の世界に身を置いていると、その常識が揺らぐ瞬間もある。
選手のためになる嘘。 選手を前に進ませる嘘。 選手の未来を開く嘘。
そんな良い嘘が存在する。
もちろん、嘘を推奨したいわけじゃない。 ただ、競技者の心はときに真実よりも信じたことに動かされる。
そして、信じたことが現実を変えることがある。
その象徴とも言えるのが、 テニス界のレジェンド セリーナ・ウィリアムズ と 名コーチ パトリック・ムラトグルー のエピソード。
セリーナを変えた「80%」という嘘
ある時期、セリーナはネットプレーに苦手意識を持っていた。
ショートボールを打つと前に出ないといけない→前に出るとミスをする。→ 前に出ると負ける。
だから、前に出なくなり本来のプレイが出来なくなっていった。
どれだけ練習しても、 どれだけ技術があっても、心が拒否している状態では前に出られない。
そんな状況を変えるために、 ムラトグルーコーチはある最終手段を使った。
もちろん、実際はそんな数字ではない。 むしろ、苦手意識があるのだからもっと低い。
セリーナは最初、信じなかった。
だが、ムラトグルーはその場でスタッツを見せ、
と言い切った。
本当は嘘だ。 だけど、選手の未来のための嘘だった。
その瞬間から、セリーナは前に出るようになった。 80%という数字が、彼女の心のブレーキを外した。
そして、彼女はネットプレーを克服し、試合を制した。
これが、嘘が、真実を作った瞬間とも言える。
思い込みは、持っている力を封印する
この話が示しているのは、
苦手だという思い込みが その技術を封印していただけ。
ムラトグルーコーチの「80%」という言葉は、 新しい能力を与えたのではなく、すでに持っていた力の封印を解いた。
蓋が外れた瞬間、 セリーナ選手の中に眠っていた技術が、 ようやく本来の姿で発揮され始めた。
これは、トップ選手だけの話ではない。 どんな競技者にも起こり得ることだということ。
競技者は技術を磨き、体を鍛え、戦術を考える
だけど、心の中にある思い込みは、 そのすべての努力を発揮せずに封印してしまう可能性がある。
こうした思い込みは、 事実ではなくても、 選手の行動を縛り、 パフォーマンスを下げる。
逆に、
- 「このプレーは得意だ」
- 「この場面は強い」
という思い込みは、 事実でなくても、 選手を強くすることがある。
思い込みは、 選手の未来を左右する見えない力とも言える。
なぜ思い込みはこれほど強いのか
思い込みが強い理由は、 脳の仕組みにある。
脳は「自分が信じていること」を優先して処理する。 これを心理学では 確証バイアス と呼ぶ。
つまり、
「自分は苦手だ」と思っていると、 苦手な証拠ばかりを拾い集めてしまう。
逆に、
「自分はできる」と思っていると、 できた証拠ばかりが目に入る。
ムラトグルーコーチがセリーナ選手に与えた80%という嘘は、 この脳の仕組みを逆手に取ったもの。
「私は前に出れば80%決められる」 そう思い込んだ瞬間、 脳はできた証拠を探し始める。
そして、 本当にできるようになる。
思い込みは、現実を変える力を持っている。
選手のためになる嘘とは何か
ここで誤解してほしくないのは、 「嘘をつけばいい」という話ではない。
大切なのは、選手の未来を開くための嘘であること。
選手を甘やかす嘘ではなく、選手を依存させる嘘でもない。
選手が本来持っている力を引き出すための嘘。 選手が自分を信じるための嘘。
それが時には良い嘘になる可能性があるということ。
結果的にムラトグルーの嘘は、 セリーナの未来を開いた。
だからこそ、その嘘は真実に変わった。
思い込みを変えると、行動が変わる
思い込みが変わると、 選手の行動、プレイが変わる
プレイが変わると結果も変わる。
そして結果が変わると、 選手としての未来が変わる。
つまり、 ブレーキとなっている思い込みを変えることは、選手の未来を変えることと同じ。
だからこそ、コーチは選手の思い込みに働きかける必要がある。
ときには、真実よりも、選手が信じられる言葉を選ぶことが必要だということ。
それは嘘ではなく、 選手の未来を信じる行為とも言える。
思い込みを外す場をつくる──それが私の仕事
選手がどんな思い込みを抱えているのか。 どんな場面でブレーキがかかっているのか。 そして、そのブレーキがどんな心のクセから生まれているのか。
これらは、選手自身が気づいていないことがほとんど。
だからこそ、 対話を通じて選手が自分の思い込みに気づき、 その思い込みを外していく場をつくること。
それが、私が行っているスポーツメンタルコーチングの本質。
もちろん技術も大事、 だけど、心の前提が変わるだけで、 選手のプレーは驚くほど変わるということをしってほしい。
セリーナ選手のように、 たったひとつの思い込みが外れただけで プレーが変わり、 自信が変わり、 未来が変わる。
さっき述べたようにこれはトップ選手だけの話ではなく、どんなレベルの選手にも起こり得る。
最後に
思い込みは、選手の未来を変える武器になる
もし今、あなた自身が苦手意識に縛られていたり、 自分の中のブレーキに気づいているのなら、 その迷いは、あなたの中で何かが動き始めている証かもしれません。
そして、その変化を確かなものにするための最初の一歩として、 私は「体験コーチング」という場を用意しています。
そこでは、 あなたが抱えている思い込みを一緒に見つけ、本来のあなたが持っている力を取り戻すお手伝いをします。
もし少しでも興味があるなら、 ぜひ一度、体験コーチングに来て頂きたい。
あなたの中に眠っている可能性は、 思い込みが外れたときに姿を現す本来の力の中にあります。
その力が動き出す瞬間を、 私は全力で支えていきたいと思っています。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者