スポーツメンタルコーチ上杉亮平
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辞めたら負けという幻想──サンクコストが作る競技者の嘘

 

「辞めたら負け」という言葉はいつから競技者を縛り始めるのか

競技を続けていると、ある言葉が心に住みつく。

 

「辞めたら負けだ」 

 

最初は誰かに言われたわけでもない。 指導者がそう言ったわけでもない。 チームメイトがそう思っているわけでもない。

だけど、気づけばその言葉が、 自分の心の奥で静かに重くなっていく。

 

本当は変えた方がいいと分かっているのに、 変えられない。

 

本当は休んだ方がいいと分かっているのに、 休めない。

 

本当は別の道があると分かっているのに、 選べない。

 

今までのやり方を辞めることが 怖いと感じる。

 

そんな競技者の常識のようなものが、 いつの間にか自分の価値観を支配していく。

だけど、この価値観は本当に正しいのだろうか?

 

いや、むしろ逆だと言っても良い。

 

これは競技者が最も陥りやすい 幻想であり、 その幻想を強めているのが サンクコスト効果 。

 

サンクコスト効果

──競技者の心に潜む静かな支配者

サンクコスト効果とは、 「過去にかけた時間・努力・犠牲を惜しむあまり、 本来の最善の選択ができなくなる心理」のこと。

 

ただし、競技者にとってのサンクコストは、 教科書に載っているような軽い話ではない。

 

競技者は、 常に積み重ねを大事にする生き物と言っても良い。

 

  1. 早朝の自主練

 

  1. 誰よりも遅くまで残った練習

 

  1. 痛みを抱えながら続けた日々

 

  1. 友達との時間を削った週末

 

  1. 家族の支えを背負ってきた年月

 

そのすべてが積み重ねとして意味を持つ。

だからこそ、 積み重ねたものを手放すことが怖い。

そして、その怖さが 「辞めたら負け」という幻想を生む。

 

辞めたら負けという幻想は、こうして生まれる

競技者が「辞めたら負け」と思い込む背景には、 サンクコスト効果が深く関わっている。

 

1. 過去の努力を無駄にしたくない

「ここまで頑張ってきたのに」 「今さら辞めたら全部無駄になる」 「積み上げたものが消えてしまう」

このもったいなさが、選手を縛る。

 

2. 過去の自分を裏切りたくない

「昔の自分が泣く」 「あの時の努力を否定したくない」 「途中で投げ出す人間になりたくない」

これは、過去の自分への忠誠心とも言える。

 

3. 他人の目が怖い

「辞めたらどう思われるだろう」 「逃げたと思われるのが嫌だ」 「親や指導者の期待を裏切れない」

これは、他者評価への恐怖。

 

4. 競技がアイデンティティになっている

「競技を辞めたら自分が何者か分からなくなる」 「競技がなくなったら空っぽになる」 「競技が自分の価値そのもの」

これは、存在の不安。

 

これらが絡み合うと、 選手は辞められないのではなく、 辞めるという選択肢が見えなくなる。

そして、選択肢が見えなくなった状態を、 人は「辞めたら負け」と呼ぶ。

 
だけど、これは嘘だ。

 

辞めたら負け。 続けたら勝ち。 変えたら逃げ。 休んだら甘え。

これらはすべて、 サンクコスト効果が作り出した 幻想 にすぎない。

なぜなら、競技における勝ち負けは、 今までのやり方を続けたかどうかで決まるものではないから。

本当の勝ち負けは、 自分の未来をどう選ぶか で決まる。

 

辞めることは負けではないし、続けることも勝ちではない。

辞めることは、 負けではないし、続けることが、 勝ちでもない。

変えることは、 弱さではないし、休むことは、 甘えではない。

 

むしろ、 自分の人生を選び直す勇気こそが強さだと言える。

 

競技者は、 「続ける=強い」 「辞める=弱い」 という単純な構図で物事を捉えがち。

だけど、現実はもっと複雑で、もっと深い。

 

続けることが正しい時もあれば、 辞めることが正しい時もある。

 

変えることが未来を開く時もあれば、 休むことが成長につながる時もある。

 

大切なのは、 過去ではなく今の自分にとって何が最善かを考え選択すること。

 

サンクコストが強く働くと、選手は未来を失う

サンクコスト効果が強くなると、 選手は過去の延長線上でしか未来を考えられなくなる。

 

  1. 今までこうしてきたから

 

  1. ここまで頑張ったから

 

  1. 今さら変えられないから

 

  1. 無駄にしたくないから

 

これらの言葉は、 一見すると前向きに聞こえるけど、実際には、 未来を閉ざす言葉とも捉える事ができる。

未来は、 過去の延長線上にあるわけではない。

未来は、今の選択からしか生まれない。

 
では、どうすればサンクコストの罠から抜け出せるのか

 

サンクコスト効果を理解することは、 過去を否定することではない。

むしろ逆だと捉えてほしい。

 

過去を抱えたまま、 未来を選び直すための視点。

そのために必要なのは、 たったひとつ。

 
「過去に何をかけたか」ではなく「これからの時間をどう使いたいか」で選ぶこと。
 

悔しさやもったいなさを否定する必要はない。 それらは、あなたが本気で競技に向き合ってきた証。

その感情を抱えたまま、 未来を選び直せばいい。

 

競技は人生を奪うものではない。

人生の中に競技がある。

競技は素晴らしい。 人を強くし、成長させ、人生に意味を与えてくれる。

だけど、競技は人生そのものではないということ。

競技は人生の一部であり、 人生の中に競技がある。

この順番を取り戻したとき、 競技はあなたを苦しめるものではなく、 あなたを支えるものに戻る。

サンクコスト効果は、 過去に縛られる心のクセ。

だけど、 私たちはいつでも「これから」を選び直せる。

過去を背負ったまま、 未来へ向かっていい。

それが、辞めたら負けという幻想から自由になるということ。

常に選び直せるという意識を持っている人が新しい自分と出会うことができる。

「未来は、勇気ある撤退から始まることもある。」

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

コラム著者
プロスポーツメンタルコーチ上杉亮平
全てのアスリートが競技を楽しみ、自分らしさを輝かせる世界を創る。ことを目指し
「メンタルで視点(せかい)が変わる」この言葉胸にアスリートを自己実現へと導くサポートをしています。詳しくはこちら

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