スポーツメンタルコーチ上杉亮平
試合で力を発揮できないあなたへ、心の土台を整える伴走者
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受け入れる力が課題を照らす──“負け”から始まる本当の成長

 

「負けた」「結果が出なかった」「思うようにいかなかった」──そんな瞬間に、私たちは何を感じ、どう向き合うべきなのでしょうか。

悔しさ、焦り、自己否定。 それらの感情に飲み込まれそうになる時こそ、必要なのは「現状を受け入れる力」です。

この力がある人は、課題を直視できる。 そして、次に進むための“本当にやるべきこと”が見えてくる。

本コラムでは、「受け入れる力」がなぜ重要なのか、どうすれば育てられるのかを、心理学的背景と実践的視点から紐解いていきます。

 

現状を受け入れるとは何か?

「受け入れる」とは、諦めることでも、妥協することでもありません。 それは、今の自分の状態を、評価や否定をせずに“そのまま見る”ことです。

心理学ではこれを「自己受容」と呼びます。 信州大学の研究では、自己受容とは「善悪の判断ではなく、ただ素直に“今の自分はこうなのだ”と暖かく受け止めようとする姿勢」だと定義されています。

この姿勢があるからこそ、私たちは冷静に現状を把握し、次に進むための課題を見つけることができるのです。 自己受容は、感情を否定せずに観察する力であり、変化のスタートラインでもあります。

その象徴的な例として、2025年11月のWBC世界バンタム級チャンピオン決定戦で敗れた那須川天心選手の試合後の姿勢が挙げられます。 格闘技キャリア55戦目で初黒星を喫した彼は、悔しさを滲ませながらも「こっから始まるなー」「人生おもしろいな」と語り、敗戦を前向きに受け止める姿勢を見せました。

「みんなの前で恥をさらすのも格闘技。一生懸命生きている奴しかそういうことはできない」と語ったその言葉には、結果を受け入れたうえで、次に進む覚悟と誇りが込められていました。

敗北を否定せず、そこから学びを得ようとする姿勢は、まさに自己受容の体現であり、次なる飛躍を予感させるものでした。 結果を受け入れる強さは、競技者としての成長を支える土台なのです。

 

受け入れられないと、何が起きるか?

結果が出なかった時、私たちはつい「なぜできなかったのか」「自分はダメだ」と自分を責めてしまいます。

しかし、現状を否定すると脳は「防衛モード」に入り、課題を直視することができなくなります。

 

脳の仕組み

扁桃体の過剰反応  

扁桃体は「恐怖」や「不安」に強く反応する部位です。結果を否定したり、自分を責めたりすると、扁桃体が過剰に働き、危険や脅威に過敏になります。  その結果、冷静な分析よりも「身を守る反応」が優先されてしまいます。

 

前頭前野の機能低下  

前頭前野は論理的思考や課題解決を担う部位ですが、扁桃体が強く反応するとその働きが抑制されます。  つまり「どう改善すればいいか?」という冷静な課題分析ができなくなり、代わりに以下のような反応が出やすくなります。

 

  1. 自分を責める(自己否定)

 

  1. 他人に怒りを向ける(責任転嫁)

 

  1. 変化を先延ばしにする(回避行動)

 

このように、防衛モードに入った脳は「課題を直視する力」を失い、改善のための行動が止まってしまうのです。

 

レジリエンスとの関係

ここで重要になるのがレジリエンス(心理的回復力)です。 レジリエンスとは「逆境や失敗から立ち直り、再び前に進む力」を指します。

 

  1. 受け入れられない人は、失敗を「自分の価値の否定」と捉えやすく、立ち直りが遅くなります。

 

  1. 受け入れられる人は、失敗を「課題を知る機会」と捉えるため、立ち直りが早く、次の行動に移りやすい。

 

心理学的にも、レジリエンスの高い人は「現状を受け入れる力」が強いことが分かっています。 失敗や負けを直視し、それを糧にできる人は、結果的に成長のスピードも速いのです。

 

受け入れることで見えてくるもの

一方で、現状を受け入れると、脳は「探索モード」に切り替わります。

 

  1. 今の自分に足りないもの

 

  1. 本当にやるべきこと

 

  1. 変化のための具体的な一歩

 

これらが自然と見えてくるのです。 自己受容は「心の解像度を高める」行為でもあります。感情の正体や本当の望みが明確になることで、次の行動が選びやすくなるのです。

受け入れることは、心のピントを合わせる行為なのです。

 

“負け”を受け入れる強さ

勝った時よりも、負けた時のほうが、自分の本質が見える。 結果が出なかった時こそ、自分の課題と向き合うチャンスです。

 

  1. なぜ集中できなかったのか

 

  1. どこで判断を誤ったのか

 

  1. 何を見落としていたのか

 

これらは、現状を受け入れた人にしか見えてきません。 「悔しいけど、これが今の自分だ」と認めることが、次の一歩を生むのです。

 

受け入れる力を育てる3つのステップ

1. 感情を否定せず、観察する

「イライラしている」「不安を感じている」といった感情を、ジャッジせずに言語化する。 → 日記やジャーナリングが有効。

 

2. 自分の状態を“そのまま”書き出す

「今の自分は○○ができていない」「○○に悩んでいる」と、現状を客観的に書き出す。 → 自己分析ツールやジョハリの窓も活用可能。

 

3. 変化ではなく“選択”に意識を向ける

「変わらなきゃ」ではなく、「今、何を選ぶか」に焦点を当てる。 → 小さな行動(深呼吸、スマホを置く、5分だけ集中する)から始める。

 

競技者や挑戦者にとっての意味

受け入れる力がある人は、現状を冷静に把握できるため、課題を明確にし、行動に移すスピードが速い。 また、自己否定に陥らないため、失敗しても立ち直りが早く、継続力がある。

これは、競技者や挑戦者にとって極めて重要な資質です。 試合や本番では、必ず「思い通りにいかない瞬間」が訪れます。そこで現状を否定してしまうと、焦りや怒りに飲み込まれ、次の一手を誤ります。 逆に、現状を受け入れられる人は「今の自分はこうだ」と冷静に認識し、そこから最適な選択を導き出せるのです。

この力はスポーツだけでなく、ビジネスや日常生活にも通じます。プレゼンで失敗した時、商談で成果が出なかった時、あるいは人間関係で思うようにいかなかった時──その瞬間に現状を受け入れられるかどうかが、次の行動の質を決めます。

 

■最後のメッセージ

結果が出なかった時こそ、受け入れる力が問われます。 それは、逃げではなく、前に進むための勇気です。

現状を受け入れることで、課題が見える。 課題が見えるからこそ、やるべきことが明確になる。 そして、行動が生まれる。

受け入れる力は、自己理解の土台であり、行動の起点です。 「負けた」「悔しい」「うまくいかなかった」──そんな時こそ、静かに現状を見つめてみてください。

その一歩が、今日のあなたを整え、明日のあなたを変えていきます。 そして、負けや失敗を受け入れた経験こそが、未来の飛躍を支える力になるのです。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

コラム著者
プロスポーツメンタルコーチ上杉亮平
全てのアスリートが競技を楽しみ、自分らしさを輝かせる世界を創る。ことを目指し
「メンタルで視点(せかい)が変わる」この言葉胸にアスリートを自己実現へと導くサポートをしています。詳しくはこちら

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