受け身の朝がパフォーマンスを下げる──競技者が守るべき“最初の1時間”の使い方

「朝の最初の1時間で一日が左右される」と聞いて、どのように感じますか?
競技者として日々のコンディションや集中力に敏感な方ほど、この言葉の重みを直感的に理解されるかもしれません。 これは単なる生活習慣の話ではなく、脳と心の“初期設定”をどう整えるかという、極めて本質的なテーマです。
起きた瞬間、何をしているかがすでに“勝負”
朝起きた瞬間、まず何をしていますか?
スマートフォンでニュースをチェックする。SNSを開いて誰かの投稿に反応する。YouTubeのショート動画を流し見する──
これらは、ぼんやりした頭でも“思考停止”でできてしまう行動です。 そしてそれらは、脳にとって最も影響を受けやすい時間帯に、外部のノイズを大量に流し込む行為でもあります。
脳科学的には、起床直後の脳はアルファ波とシータ波が優位な状態にあります。 この状態は、潜在意識にアクセスしやすく、外部刺激が“その日の基準”として刷り込まれやすい時間帯です。
つまり、朝の最初の1時間に何を感じ、何を考え、何を選ぶかが、 その日一日の思考・感情・行動の“初期設定”=デフォルトになるのです。
受け身の朝は、受け身の一日をつくります
一日の始まり方が受動的であれば、その後もずっと受け身で過ごすことになります。 これは、脳の“可塑性”と“習慣形成”のメカニズムによって説明できます。
脳は、繰り返される行動に対して神経回路を強化します。 つまり、朝に「反応するだけの自分」を繰り返してしまうと、 本番でも“反応するだけの自分”が定着してしまうのです。
競技者にとってこれは致命的です。 本番で必要なのは、自分で選び、決め、動く力です。 その力は、朝の1時間で育てることができます。
あえて“頭を使う”時間にする
朝の1時間に、あえて頭を使う作業を持ってくることは、競技者にとっての“ウォームアップ”に近いものです。
試合前に身体を温めるように、 朝の時間に「今日の目標を考える」「昨日の振り返りをする」「自分への問いを立てる」など、 思考のウォームアップを行うことで、 脳は“自分で動くモード”に切り替わっていきます。
これは、まるで「弓の照準を定める」ような行為です。 的を定めずに矢を放てば、どこに飛ぶかは運任せになります。 しかし、朝の時間に自分への問いや目的を明確にすることで、脳はその日一日の“的”を認識し、そこに向かって思考と行動を整えていくのです。
競技者にとって、これは非常に重要な感覚です。 ウォームアップで身体の可動域を広げるように、朝の思考の照準合わせは、脳の可動域=集中力・判断力・創造力の幅を広げる準備になります。
そしてこの照準は、外から与えられるものではなく、自分で定めるものです。 「今日は何に挑むのか」「どんな姿勢で臨むのか」── こうした問いが、脳の“自分で動くモード”を起動させるスイッチになります。
このように、朝の1時間に頭を使うことは、単なる準備ではなく、競技者としての“方向性”と“質”を決める設計行為ります。
スマホ・人・ドーパミンから距離を取る
スマートフォン、SNS、ショート動画などは、脳に大量のドーパミンを放出させます。
一見、気持ちが高まるように思えますが、 その後の集中力・判断力・感情の安定性を奪う“過剰刺激”でもあります。
競技で例えるなら、試合前にエナジードリンクを何本も飲んで、 一時的にテンションを上げた結果、後半にガス欠になるようなものです。
だからこそ、朝の1時間は「誰にも邪魔されない自分だけのもの」にすることが大切です。 外からのノイズを遮断することは、自分を尊重する訓練でもあります。
この習慣は“筋肉”のように育つ
最初は違和感があるかもしれません。 静かな朝に何をすればいいのか、戸惑うこともあるでしょう。
しかし、この習慣は繰り返せば繰り返すほど、筋肉のように育ちます。 脳の神経回路は、繰り返しによって強化されます。 そしてその回路は、本番での思考・感情・行動の“土台”になるのです。
競技者にとって、朝の1時間は“静かな勝負の時間”。 誰にも見られない、誰にも評価されない、でも確実に力になる時間です。
デフォルトを設定する──“迷い”を削り、“創造”に集中する
朝の1時間を守ることと並んで、競技者にとって重要なのが「デフォルト設定」です。
デフォルト設定とは「思考の初期反応を設計すること」です
毎日をゼロから決めるのは、重い荷物を背負って旅に出るようなものです。 一つひとつの選択にエネルギーを使いすぎると、本来集中すべき競技に使うべき力が削られてしまいます。
だからこそ、前日の夜に「明日やること」をある程度決めておくことが大切です。 それだけで、朝の迷いが減り、やる気やモチベーションに頼らずに行動できるようになります。
これは、習慣化の科学的アプローチでもあります。 「感情に頼らない仕組み作り」が、継続と成果の鍵になります。
迷いを削ることで“創造”に集中できます
競技者にとって、最も重要なのは「本番で何をするか」ではなく、 本番までに“何を考えずに済むか”でもあります。
迷いが多いほど、脳のワーキングメモリが消耗し、 創造的な判断や直感的なプレーが鈍ってしまいます。
だからこそ、デフォルト設定を持つことは“脳の余白”を確保する戦略でもあります。 その余白が、競技者としての“圧倒的な成果”を生み出します。
まとめ
朝の1時間とデフォルト設定は、競技者の“静かな武器”です
競技者にとって、朝の1時間は「準備」ではありません。 それは、脳と心の“初期設定”を自分で握る時間です。
そして、デフォルト設定は「行動の設計図」であり、 迷いを削り、創造に集中するための“静かな武器”です。
この2つを組み合わせることで、 競技者は本番で“自分で選べる自分”になれます。
立派なルーティンでなくても構いません。 完璧な計画でなくても構いません。 ただ、自分の朝を、自分で選ぶこと。
それが、競技力を支える最も静かで、最も強い習慣になります。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者