競技者の孤独と向き合う──報われない時間の意味

「努力が報われない」と感じているあなたへ
どれだけ練習しても、結果が出ない。 自分なりに工夫して、考えて、時間もエネルギーも注いでいるのに、 試合では思うようにいかない。 周りの選手が結果を出していく中で、自分だけが取り残されているような気がする。
そんなとき、心の中にふと浮かぶ言葉がある。 「もう、やめた方がいいのかな」
このコラムは、そんな瞬間に読んでほしい。 あなたの努力が、今どんな意味を持っているのか。 そして、なぜ“報われない”と感じるのか。 その理由と、そこからどう抜け出すかを、 競技者のあなたに向けて、丁寧に伝えたいと思います。
なぜ「報われない」と感じるのか?
まず知っておいてほしいのは、努力が報われないと感じるのは、あなたの努力が足りないからではないということ。 むしろ、多くの場合は「努力の質」や「評価のタイミング」によって、そう感じさせられているだけなのです。
心理学には「公正世界仮説」という考え方があります。 これは「努力すれば報われるはず」「善いことをすれば良い結果が返ってくるはず」という信念。 この信念が裏切られたとき、人は強い無力感を抱きます。
また、脳の報酬系の仕組みも関係しています。 東北大学の細田千尋准教授によれば、報酬が得られない状態が続くと、脳内のドーパミン分泌が低下し、やる気や幸福感が著しく減少することがわかっています。
つまり、「報われない」と感じるのは、脳の自然な反応でもあるのです。 あなたが弱いからでも、間違っているからでもない。
結果が出ない時期にこそ、育っているものがある
植物が芽を出す前に、まず根を張る。 地上からは何も見えないけれど、土の中では確かに成長が進んでいる。 競技者の努力も、それと同じです。
脳科学では「シナプス可塑性」という現象が知られています。 これは、繰り返し同じ神経回路を使うことで、脳の構造そのものが変化していくというもの。 つまり、続けることでしか“自分の中身”は変わらない。
結果が出ない時期は、根を張っている時間。 それは、見えないけれど、確実に未来を支える力になっていく。
「報われる」の定義を、自分で決める
でも、努力の価値は“結果”だけにあるわけではありません。
- 自分を信じて続けた経験
- 失敗から学んだこと
- 誰かに与えた影響
- 自分の中に育った強さや優しさ
これらは、数字や評価には表れない“報酬”です。 そして、本当に大切なものは、いつも静かに育っている。
そう思えるようになるために、できること
頭ではわかっていても、心がついてこない。 「結果がすべて」と刷り込まれてきた世界で、 「見えない成長に意味がある」と信じるのは、簡単じゃない。
だからこそ、少しずつでいい。 今の自分にできることから始めてみてほしい。
1. 自分の努力を“記録”する
結果が出ないときほど、努力の手応えが見えなくなる。 だからこそ、自分の積み重ねを“見える化”することが大切です。
- 今日やったことをメモする
- 練習で気づいたことを書く
- うまくいかなかったことも、正直に残す
それは、誰かに見せるためじゃなく、自分が自分を認めるための記録です。
2. “結果以外の価値”に目を向ける習慣をつくる
試合の勝敗や記録だけでなく、 その過程で得たものに意識を向ける習慣をつくってみてください。
- 緊張したけど、逃げずに向き合えた
- 仲間の言葉に救われた
- 悔しさを感じたことで、次の課題が見えた
こうした“見えない報酬”に気づけるようになると、 努力の意味が、結果だけに縛られなくなります。
3. 自分の言葉で「なぜ続けているのか」を書いてみる
競技を続ける理由は、人それぞれです。 でも、その理由を“自分の言葉”で書いてみることは、 迷ったときの支えになります。
- なぜこの競技を始めたのか
- どんな瞬間に「やっててよかった」と思えたか
- どんな自分になりたいのか
書いてみると、今の努力が“未来の自分”につながっていることに気づけます。
4. 誰かと話すことで、視点が変わることもある
一人で考えていると、どうしても視野が狭くなる。 だからこそ、信頼できる人と話すことも大切です。
- 同じ競技をしている仲間
- 自分の気持ちを否定せずに聞いてくれる人
- 結果だけでなく、過程を見てくれる人
話すことで、感情が整理され、 「自分の努力には意味がある」と思える視点が、少しずつ育っていきます。
最後に──一人でやるのが難しいと感じたら
ここまで読んでくれたあなたは、きっと真剣に競技と向き合っている人だと思います。 だからこそ、苦しいときほど「自分でなんとかしなきゃ」と思ってしまうかもしれません。
でも、一人で抱え込まなくてもいいんです。 もし今、「整理したい」「誰かと話したい」と少しでも感じているなら── 私、上杉亮平が一緒にサポートします。
競技者の心に寄り添い、言葉にならない感情を整える。 それが、スポーツメンタルコーチとしての私の役割です。
体験コーチングでは、今のあなたのままで来てください。 無理に前向きになる必要も、うまく話そうとする必要もありません。
あなたの努力が、ちゃんと意味を持つように。 その準備を、ここから一緒に始めましょう。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者