競技者の心を整える“お守り”の力
ゲン担ぎ・願掛けがメンタルに与える科学的な影響と実践法

「なぜ、多くの野球選手は金のネックレスをつけるのか?」
このコラムを書こうと思ったきっかけは、ふとした疑問からだった。 野球選手の多くが、試合中に金のネックレスを身につけている。 それはファッションなのか?それとも、何か意味があるのか?
調べてみると、そこには「ゲン担ぎ」「願掛け」「お守り」といった、競技者ならではの心理的な背景が見えてきた。
そしてもうひとつ。 私は日々、選手たちに「クレド(信条)を書いたカードを持ち歩くこと」を勧めている。 ある選手に「もう覚えてるし、口ずさめるから持ち歩かなくてもいいのでは?」と言われたことがある。
確かに、記憶や習慣として定着していれば、機能的には十分かもしれない。 でも、それでも「持ち歩くこと」には、目に見えない大きな意味がある。 その理由が、このコラムの核心につながってくる。
お守り・ゲン担ぎ・願掛け
──競技者の心に何をもたらすのか?
1. 安心感と自己効力感を高める
心理学では「自己効力感」という概念がある。私のコラムをよく読んで頂けている方は耳に胼胝ができるほど聞き覚えのある言葉だと思うが大事な要素なので飽きずに聞いてほしい。 これは「自分にはできる」という感覚のこと。 この感覚が高いほど、困難な状況でも粘り強く取り組むことができる。
お守りやゲン担ぎは、まさにこの自己効力感を支える“心理的な支柱”になる。 「これを持っているから大丈夫」 「このルーティンをやったから、うまくいく」 そう思えるだけで、心は安定し、集中力が高まる。
2. プラセボ効果──信じる力がパフォーマンスを引き上げる
医学的にも「プラセボ効果」は広く知られている。 これは、効果のない偽薬でも「効く」と信じることで、実際に症状が改善する現象。
同様に、競技者が「このお守りがあるから勝てる」と信じることで、 実際にパフォーマンスが向上するケースは多く報告されている。
つまり、信じることそのものが、脳と身体にポジティブな影響を与えるのだ。
3. ルーティン化による集中と安心
ゲン担ぎや願掛けは、ルーティンとして定着することで、競技者の心を整える。 たとえば、試合前に必ず同じ靴下を履く、同じ音楽を聴く、同じ言葉を唱える── これらは、脳に「いつもの状態=安心できる状態」をインプットする働きがある。
これは「条件付け」と呼ばれる心理学的メカニズムで、 特定の行動が安心感や集中力と結びつくことで、競技者のメンタルが安定する。
なぜ「持ち歩くこと」に意味があるのか?
クレドカードを持ち歩くことは、単なる記憶の補助ではない。 それは「自分の信念を、物理的に身近に置く」という行為そのものに意味がある。
- 目にすることで、無意識に再確認できる
- 触れることで、安心感が生まれる
- 持っていることで、「自分は準備できている」という感覚が育つ
これは「アンカリング」という心理的効果にも通じる。 特定の物や言葉が、自分の状態を“引き戻す”役割を果たすのだ。
野球選手の金のネックレス
──それは“自分との約束”かもしれない
金のネックレスを身につける野球選手たち。 それは、単なるファッションではなく、 「自分を整えるためのスイッチ」なのかもしれない。
- 勝利への願掛け
- 自分のルーツや信念の象徴 先輩からの継承
- 試合への覚悟を形にしたもの
それは、誰かに見せるためではなく、 「自分自身に見せるためのもの」なのだ。
競技者に限らず、誰にでも「手放せないもの」がある。 それは、財布の中の写真かもしれない。 お気に入りのペンかもしれない。 あるいは、クレドカードのような信条の言葉かもしれない。
それらは、目に見えないけれど、確かに「心を支える力」を持っている。
最後に
──信じるものが、あなたを整える
「もう覚えてるから、持ち歩かなくていい」 そう言いたくなる気持ちも、よくわかります。 でも、持ち歩くことには、記憶を超えた意味がある。
それは、 「自分はこれを信じている」 「自分はこれで整えられる」 という、静かな誓いのようなもの。
競技者にとって、メンタルは技術と同じくらい重要な武器。 その武器を整えるために、 あなたの“お守り”を、もう一度見直してみてほしい。
そして── もし今、
心の軸が揺らいでいるなら。 試合前に不安が強くなるなら。 集中できない瞬間があるなら。
メンタルコーチという“お守り”を、そばに置いてみませんか?
それは、あなたの中にある力を引き出す存在。 静かに、でも確かに、あなたの心を整える存在です。
まずは、体験コーチングというかたちで、 あなたの“整える方法”を一緒に見つけていきましょう。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者