スポーツメンタルコーチ上杉亮平
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日本女子初の五輪メダリスト・人見絹枝──偏見を越えて走った女性の物語

 

女性が走ることが“恥”だった時代に

1928年、アムステルダム。 日本から一人の女性が、世界の舞台に立ちました。 人見絹枝──日本女子初のオリンピックメダリスト。 彼女が銀メダルを獲得した女子800mは、当時の日本社会にとって“異質”な出来事でした。

当時、女性がスポーツをすることは「はしたない」「女らしくない」とされ、 走る姿を見られることすら“恥”とされていた時代。 そんな中、彼女は自らの身体で壁を破ったのです。

 

どんな人だったのか

──人見絹枝という人間

人見絹枝は1907年、岡山県の裕福な農家に生まれました。 幼少期から活発で、魚とりや鬼ごっこが大好き。男の子たちと遊ぶことが多く、負けず嫌いで、2階から飛び降りて下校するような大胆さもありました。

一方で、学業成績も優秀で、特に国語が得意。短歌を習い、少女雑誌に投稿するなど、文学的な感性も持ち合わせていました。 つまり、彼女は「身体性」と「言葉の感性」の両方を持った、非常にバランスの取れた人物だったのです。

 

陸上との出会い

──最初はテニス少女だった

彼女が最初に打ち込んだのはテニスでした。 岡山高等女学校に入学後、県大会で優勝旗を持ち帰るほどの実力を発揮し、「テニスの人見さん」と呼ばれるようになります。

その後、陸上競技大会に出場した際、走り幅跳びで日本最高記録(非公認)を叩き出し、周囲の注目を集めます。 この記録がきっかけとなり、陸上競技の世界へ本格的に足を踏み入れることになりました。

 

 罵声の中で走った800メートル

陸上に転向してからも、彼女の道は平坦ではありませんでした。 「女が走るなんて」「みっともない」といった偏見が日常的に浴びせられ、実家には誹謗中傷の手紙が届くこともありました。

それでも彼女はこう言い放ちます。

「いくらでも罵れ! 私はそれを甘んじて受ける。 だが、私の後に続く女子選手には指一本触れさせない!」

この言葉には、個人の覚悟だけでなく、未来への責任が込められていました。 自分が盾となって、後に続く女性たちの道を守ろうとしたのです。

 

世界を驚かせた銀メダル

1928年、アムステルダム五輪。 女子800mが史上初めてオリンピック種目として採用され、人見絹枝は日本女子選手としてただ一人、出場しました。

本命は100mでしたが、準決勝で敗退。 その悔しさを胸に、彼女は800mへの出場を自ら願い出ます。 実は、それまで800mを走ったことがなかったにもかかわらず。

結果は銀メダル。 これは、日本女子選手として初の快挙でした。 彼女の走りは、「女性がスポーツをしてもいい」という社会的メッセージとなり、国内外に衝撃と希望を与えました。

 

その後の人生と、静かな闘い

帰国後、人見絹枝は講演活動や指導を通じて、女性スポーツの普及に尽力します。 しかし、過酷なトレーニングと社会的な重圧の中で、彼女の身体は限界を迎えていました。

1931年、わずか24歳で病に倒れ、帰らぬ人となります。 その短い生涯の中で、彼女が残したものは記録以上に大きなものでした。

それは、「女性がスポーツをすることは、誇りである」という価値観の種でした。

 

彼女の一歩が、今の当たり前をつくった

今、女性がスポーツをすることは当たり前になりました。 オリンピックで活躍する女子選手、プロリーグで戦うアスリート、 部活動で汗を流す女子中高生──そのすべての背後に、人見絹枝の一歩があります。

彼女が罵声の中で走った800メートルは、 私たちが自由に走れる800メートルの“始まり”だったのです。

 

最後のメッセージ

──勇気とは、誰かのために立ち上がること

人見絹枝さんの物語は、ただのスポーツ史ではありません。 それは、「自分のためだけではなく、誰かの未来のために走る」という覚悟の物語です。

今、何かに挑戦しようとしている人へ。 周囲の声に迷いそうになったとき、 この言葉を思い出してほしい。

「いくらでも罵れ! 私はそれを甘んじて受ける。 だが、私の後に続く女子選手には指一本触れさせない!」

その一歩が、誰かの道になる。 人見絹枝さんがそうだったように、あなたの挑戦も、きっと誰かの希望になります。

あなたが踏み出すその一歩は、まだ見ぬ誰かの「できるかもしれない」に火を灯す。 恐れながらでもいい。震えながらでもいい。 その足で、あなたの道を、あなたの速さで、進んでください。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

コラム著者
プロスポーツメンタルコーチ上杉亮平
全てのアスリートが競技を楽しみ、自分らしさを輝かせる世界を創る。ことを目指し
「メンタルで視点(せかい)が変わる」この言葉胸にアスリートを自己実現へと導くサポートをしています。詳しくはこちら

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