競技者の心を整える2分間|科学が証明するヒーローポーズの力

競技者にとって、自信は技術や体力と並ぶ“見えない武器”です。 しかし、試合前の緊張やスランプ期の不安、結果が出ない時の焦りなど、メンタルは常に揺れ動きます。 そんな時、思考や習慣だけでなく、“姿勢”という一時的な行動がメンタルを変える力を持っていることをご存知でしょうか。
今回は、競技者の自信を育てる「ヒーローポーズ」の科学的根拠と、実践的な活用法についてお伝えします。
姿勢がメンタルに与える影響とは?
心理学では、「身体化認知」という概念があります。 これは、私たちの思考や感情が身体の状態と密接に結びついているという考え方です。
- 落ち込んでいる時は、自然と背中が丸まり、視線が下がる
- 自信がある時は、胸を張り、視線が上がる
このように、感情が姿勢に現れるのは自然なことです。 しかし、逆もまた真なり。姿勢を変えることで、感情や思考が変わるという研究結果が数多く報告されています。
ヒーローポーズとは?

「ヒーローポーズ」とは、スーパーヒーローのように胸を張り、両手を腰に当てて立つ姿勢のことです。 足は肩幅に開き、視線はまっすぐ前を向く。 このポーズを2分間維持するだけで、メンタルにポジティブな変化が起こるとされています。
この考え方は、ハーバード・ビジネス・スクールの社会心理学者エイミー・カディ氏によって提唱され、TED Talkでも話題になりました。
科学的根拠:2分間の姿勢がホルモンバランスを変える
複数の研究によって、ヒーローポーズ(パワーポーズ)には以下のような効果があることが示されています。
- テストステロン(自信・活力に関係するホルモン)が増加
- コルチゾール(ストレスホルモン)が減少
- 自己効力感(自分にはできるという感覚)が向上
- 行動力や挑戦意欲が高まる
ある実験では、参加者を「力強いポーズ」と「自信のないポーズ」に分け、2分間姿勢を維持してもらいました。 その結果、力強いポーズを取ったグループは、テストステロン値が上昇し、コルチゾール値が低下。 さらに、ギャンブルへの挑戦率も高く、リスクを前向きに捉える傾向が強まったのです。
競技者にとっての意味
──プレパフォーマンス・ルーティンとしての活用
競技者は、試合前や重要な場面で「プレパフォーマンス・ルーティン」を持つことが多いです。 これは、集中力や自信を高めるための一連の動作や習慣のこと。
ヒーローポーズは、このルーティンの一部として非常に有効です。
- 試合前にロッカールームで2分間ポーズを取る
- 練習前に鏡の前で姿勢を整える
- 朝のルーティンに組み込むことで、1日のメンタルを安定させる
こうした習慣は、自分自身に「自分はできる」というメッセージを送る行為でもあります。
自信は“ふり”から始まってもいい
これは、パワーポーズの基本的な考え方です。
最初は“ふり”でも構いません。 姿勢を整えることで、脳が「自信がある」と認識し、ホルモンバランスが変わり、行動が変わっていく。 そして、その行動が結果を生み、やがて本物の自信へと変わっていくのです。
競技者にとって、自信は「結果が出たから持てるもの」ではなく、 「結果を出すために育てるもの」なのです。
実践のすすめ:ヒーローポーズを習慣にする方法
1. 毎朝2分、鏡の前でポーズを取る
→ 1日のスタートに、自分を整える時間をつくる
2. 試合や練習前に取り入れる
→ プレパフォーマンス・ルーティンとして活用
3. 目標やビジョンボードの前でポーズを取る
→ 自分の目的と向き合う時間にする
4. 仲間と一緒に取り組む
→ チーム全体の雰囲気や自信を高める
最後のメッセージ
──姿勢は、競技者の“心の軸”になる
競技の世界では、結果がすべてのように語られることがあります。 しかし、結果に揺れない自分を育てるためには、日々の小さな習慣と、自分への静かなメッセージが必要です。
ヒーローポーズは、そのためのシンプルで強力なツールです。 たった2分の姿勢が、あなたのメンタルを整え、行動を変え、結果を引き寄せる力になる。
自信は、姿勢から始まる。 そしてその姿勢は、あなた自身の“在り方”を形づくる。
今日から、ヒーローポーズを習慣にしてみませんか?
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者