正解は自分で決める|富樫勇樹に学ぶ競技者のマインドセット

「人それぞれでいいと思ってます。」
そう語る富樫選手の言葉に、競技における“自由さ”と“芯の強さ”が凝縮されています。 SNSや周囲の期待、“成功者のルーティン”が簡単に可視化される今、競技者たちは「正解」を外に求めがちです。
けれど、本当に大切なのは、“何が自分にとって心地よくて、楽しいか”という感覚を持ち続けること。
常識にとらわれず、自分の感覚を最優先にする勇気
富樫選手のルーティンは、世間の“理想像”からは大きく外れて見えるかもしれません。
ストレッチはたった44秒。
トレーニングの強度を上げようとするトレーナーには、 「止めるのが僕の仕事(笑)」と冗談交じりに返す。
「いけるかどうかじゃなくて、いかないっす(笑)」という一言も、彼のスタイルをよく表しています。
身体のケアも基本的には受けない。 その理由について、彼はこう語ります。
「アフリカで1年暮らすと胃が強くなるでしょ?それと一緒で、ケアし続けたら、しなきゃいけない身体になってしまうと思ってるんです。」
一見、極端に映るかもしれません。 でも本質は、「自分にとって本当に必要かどうかを、自分で判断する」という感覚を大切にしているということ。
“やるかやらないか”の基準を誰かに委ねず、自分で決める。 それは競技者にとって、メンタルの自立にもつながる重要な土台です。
真似しないという選択。「自分に合った方法を選ぶ」
たとえば、大谷翔平選手のようなトップアスリートが取り入れている方法に対し、 富樫選手は「すごいとは思うけど、真似したいとは思わない」とハッキリ言います。
「何が良くて、何が悪いかは自分で判断すればいい」 「自分に合ったことを、自分がやればいい」
この姿勢は、「他人をリスペクトしながらも、自分の軸をしっかり持っている」という強さの表れです。 そして、自分の判断を信じられるからこそ、自分にプレッシャーをかけすぎずにいられる。
それは決して緩さではなく、“しなやかな強さ”として彼のプレーに反映されています。
小学生の頃の「楽しい」を、プロの舞台にも持ち込む
「簡単に言うと、“楽しい”が一番なんです」
プロになっても、代表として日の丸を背負っても、 “小学生の頃、公園や家の前のリングでバスケをしていたときの気持ち”を、そのまま持ち込みたい。
富樫選手はそう語ります。
競技を続けるほど、純粋な気持ちは見失いがちになります。 でも彼はその“原点”を忘れない。
なぜ自分はこの競技を始めたのか どんなときに心から楽しいと感じていたか、その感覚を今でも大切にしているからこそ、 試合でも自然体で自分の強みを発揮し続けられるのです。
チームに支えられているという“視点”を忘れない
どれだけ日本代表で活躍していても、富樫選手はこう言います。
「自分がコートに立てているのは、チームメイトのおかげ」
これだけ自己判断を大切にするスタイルを貫きながらも、 その根底には「仲間と戦っている」という視点がしっかりあります。
自分の軸と仲間への感謝。その両方があるからこそ、 「自分らしく楽しむ」と「チームで結果を出す」は矛盾しない。 むしろ、そのバランスが彼の強さをつくっているのです。
あなたにとっての“正解”とは何か?
このコラムで伝えたかったのは、「他人の真似を否定する」のではなく、「判断軸を外に置かないでほしい」ということ。
競技者として、練習法・考え方・ルーティン……すべての選択に“正解っぽいもの”が溢れている今だからこそ、 「それは本当に自分に合っているのか?」という問いを持ち続けることが大切です。
富樫選手のように、「楽しむこと」「自分で決めること」を軸に競技と向き合えば、 結果にも振り回されず、競技を長く、深く、味わっていくことができるはず。
競技者として生きる道に、“たったひとつの正解”なんてない。 だからこそ、あなたにしかできない選択を、日々積み重ねていってほしい。
“正解は、自分でつくる。” このマインドセットが、あなたの競技人生を豊かにする最強の武器になります。