一緒に“続ける”という選択─スポーツメンタルコーチが語る目的の力

選手から「継続するって、どうしたらできますか?」と相談されたことがある。 日々の中で自然と口にしている言葉──「継続って大事だよね」。 ただ、ふと我に返ったときに考えた。 本当に、自分はできているのか?と。
コラムで語り、セッションで話し、言葉としては繰り返している。 だからこそ、その言葉にどこまで責任を持てているんだろう。 選手と一緒に「頑張ろう」と言っている自分は、誰よりも“継続”の意味と向き合っていなければいけないんじゃないか──そんな問いが、心に残った。
続けることより、「続ける人がいること」が支えになる
もちろん、選手と自分ではやっていることも、立っている場所も違う。 だからこそ「よし、一緒にやろう」「明日も続けよう」と言い合える存在がいるだけで、 ほんの少し頑張れることがある。
それは、実は“頑張る”というより“続けてみようと思える”という感覚。 継続には、「何をやるか」よりも、「誰とやるか」「誰と続けようとしているか」が大きな意味を持つ気がする。
だから、自分が何を続けているかを選手に見せることも、 彼らが自分の継続を信じられる一つのきっかけになるのではないか、とも思う。
頑張れる理由──最後に残るのは、やっぱり“目的”だった
それでも、継続のモチベーションが揺れるときはある。 毎日が忙しくて、やる気が湧かない。 選手だってそうだし、自分もそう。言葉にならない疲れの中で、今日を終えたくなる瞬間は何度もある。
そんな時に、心の奥でポツンと顔を出すのが“目的”。
- なぜそれを続けたいと思ったのか?
- なぜその人に関わろうと思ったのか?
- なぜこの道を選んだのか?
継続とは、ただ行動を繰り返すことじゃない。 目的を手放さずに、その道を選び直し続けること。 その意味では、“目的がある人”は、継続に強い。
選手と自分──一緒に継続するというスタンス
ある選手が「一人だと続かないです」とこぼした。 その時、ふと「だったら一緒にやろう」と口にした。 私のやることと、選手のやることは違う。 ただ、続ける姿勢は同じじゃないか、と。
その日から、お互いが「今日どうだった?」を交わすようになった。 形式的な報告ではなく、「継続してる感覚」を共有する小さなリズム。 これって、実はすごく大事だったりする。
一緒に継続する人がいる。 見られているとか、監視されているとかじゃなくて、 「今日もやった?」と問いかけ合える関係がある。 それが、継続の背中を押す力になる。
継続の先に何を見るか──価値観としての“選択”
続けることが目的じゃない。 “目的のために続けている”という意識があるから、意味が生まれる。
自分は何を大切にしたいのか。 それは、選手の勝利や成功だけじゃなく、その人が“自分を信じられる感覚”を育てたいと思っている。
そう考えたとき、自分自身の継続も問い直される。 選手に「信じて」と言うなら、自分が選んだ道を信じることも欠かせない。
選手と同じ目線で歩くということ
選手がどんなに才能があっても、悩む時はある。 どんなに強く見えても、迷う時はある。 その姿を、隣で見ながら「じゃあ一緒に続けよう」と言えることが、コーチとしての自分の価値なんじゃないかと思う。
競技に向き合う選手と、日々の言葉に向き合う自分。 やることは違えど、継続という意味では、一緒に頑張る仲間である。
目的があるから、続けられる。 そしてその目的は、誰かの人生をほんの少しでも“納得のあるもの”にすること。 そんな想いで、今日も一歩だけ、進んでみようと思う。
コラム著者