【視察】S League グランドファイナル

リアルに現場に足を運ぶことで、採点競技の厳しさを目の当たりにし、 選手が置かれている状況や気持ちを、以前より深く理解できたように思います。 こうした現場の空気を感じることを、私は大切にしています。
海沿いの観客席では、技が決まるたびに歓声が上がっていました。
サーフィンの面白いところは、観客の中に選手が普通に混じっていることです。
自分の出番を終えた選手、待つ選手が、一般の観客と同じ場所で海を見つめている。
その距離の近さが、この競技の独特の空気をつくっていました。
今回、その観客の反応と、審査員が提示する点数のあいだには、 わずかなズレが生じていました。
視察の最初に気づいたのは、その差です。
サーフィンは波を読む競技だと一般的には言われます。
ですが実際に現場に足を運んでみて、波だけを読んでいても試合は成立しないことがよく分かります。
どの波に対してどんな技が評価されるのか。
今日の審査員はどの程度の点数をつけるのか。
相手がどんな技の組み立てをしてくるのか。
その内容に対して、どのくらい点が出るのか。
選手は、波と同じくらい採点の流れを観察する必要があります。
その日の基準を読み取って、 自分の構成を微調整しながら試合を進めていく。
現場だからこそ感じる空気感がありました。
競技の外側から見るよりも、はるかに複雑な判断が必要になります。
実際にこの日、似たような内容のライディングでも、 点数に大きな差がつく場面がありました。
その差が技の質によるものなのか、 波の難易度なのか、 審査の解釈なのかは、外からは判断しきれない。
その曖昧さは、選手の戦略を揺らす原因の一つになります。
組み立てていた流れが、確信を持てなくなる瞬間があり、選手の判断を微妙に変えていきます。
試合後、選手によっては勝ち負けに関係なく、審査員のもとへ向かう姿が見受けられました。
勝った選手も、負けた選手も。 高得点だった選手も、そうでなかった選手も。
その行動は、単なる勝敗の結果とは別の理由で動いているように見えました。
「今日の基準はどこにあったのか」 それを確かめるための確認です。
この行動を目にできたのは、リアルを見に行ったからこそだと感じました。
点数が高かったから安心、というわけではなく、勝ったから納得、というわけでもない。
自分の位置を確認するために、 選手は採点の根拠を求めていました。
自分の点数が高くても、低くても、相手との差を感じたら確認しに行く。
それを確認することで次回以降の組み立てに関わってくるから。
採点競技では、基準が固定されません。 ある程度の方向性はありますが、機械ではなく人が採点している以上、 どうしても解釈の差が生まれることがある
サーフィンにいたっては、波も変わり、相手も変わり、 そして人が採点しているからこそ評価も変わります。
状況が一定ではない中で、選手はその都度、基準を読み取る必要があります。
そのため、選手は毎回今日の基準を探し続けています。

視察を終えたあと、 揺れる評価の中で、選手はどのように自分を保っているのか?
その問いが、自分の中に残りました。
それと同時に、現場に足を運ぶことでしか把握しきれない、 選手の心の揺れが確かに存在することを改めて強く感じました。
この感覚を持てたことが、今回の視察の一番の収穫です。
あと、隣で専門的な解説を受けながら観戦できたことは、 自分にとって非常に貴重な体験でした。
こうした機会をいただけたことに感謝しています。
ご縁を大切にしながら、競技に関わらず、選手の目で世界を見るためには、 引き続き現場でリアルをしっかり感じることを大切にしていきたいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者