行動力が落ちるのはなぜ?――競技者が知っておくべき「防衛体力」という視点

行動力が落ちてきたとき、内部では何が起きているのか
競技を続けていると、 ある時期から「動き出すまでの距離」が長くなることがある。
練習に向かう準備はしている。 競技を嫌いになったわけでもない。 気持ちが切れたわけでもない。
それでも、身体が前に出ない。 スイッチが入るまでの時間が、以前より明らかに長い。
この状態を、 「やる気がない」「怠けている」と片付けるのは簡単。 だけど、競技者の内部で起きていることは、そんな単純な話ではない。
行動力が落ちるとき、心は確実に疲れている
ただし、その心の疲れは 気持ちの弱さとはまったく別物 と思ってほしい。
競技者の心は、 気持ちで身体を動かすことに慣れている。 だから、心が疲れても「気持ちの落ち込み」としては現れにくい。
その代わりに、 身体のほうが先に限界を察知して止まる。
これらはすべて、 心の疲れが身体に現れているサイン。
つまり、
行動力が落ちる=心が疲れている
だけど、気持ちだけの問題ではない。
ここまでは理解しやすい。 だけど、ここで一つ疑問が生まれる。
なぜ「心が疲れている」のに、気持ちではなく身体の反応として現れるのか
ここは誤解されやすい部分。
まず前提として、 心が疲れると身体の反応速度が落ちるのは、一般人も競技者も同じ。
ただし、競技者には特有の事情がある。
競技者は、
- 気持ちで身体を動かす
- 疲れても練習に行く
- 痛みや緊張を日常として扱う
こうした習慣があるため、 心の疲れが気持ちの落ち込みとして表れにくい。
その代わり、 動き出しの鈍さ、判断の遅れ、身体の重さ といった 身体の反応として現れやすい。
※つまり、 「身体が止まる」というのは、 動き出すまでの反応が鈍くなる という意味であり、 実際に動けなくなるわけではない。
競技者は心の疲れに気づきにくい。 だからこそ、身体の反応が先に変化する。
この現象を正しく理解するために必要なのが、 防衛体力という視点。
防衛体力とは何か
防衛体力とは、 ストレスや負荷に耐え続けるための心身の基礎体力のこと。
筋力や持久力のように目に見えるものではないけれど、競技者のパフォーマンスを支える土台になっていると言える。
防衛体力が高いと、
-
集中が続く
-
判断がぶれない
-
気持ちが安定する
-
緊張に耐えられる
-
回復が早い
こうした競技者としての当たり前が自然に保たれる。
逆に、防衛体力が落ちると、
-
行動の初速が遅くなる
-
判断が鈍る
-
身体が重く感じる
-
気持ちが空回りする
-
何をするにも腰が重い
こうした動き出せない感覚が出てくる。
つまり、 行動力が落ちるとき、心は疲れているけれど、その疲れは「気持ちの弱さ」ではなく、防衛体力が削られていることによって起きている。
競技者は気持ちで身体を動かせてしまうため、 心の疲れに気づきにくい。 そのため、 心より先に身体が止まる という現象が起きる。
行動力が落ちるとき、内部で起きている変化
1. 心の処理速度が落ちている
行動力が落ちるとき、 最初に落ちるのは「やる気」ではなく、 判断の速度 。
- 何から始めるか
- 今やるべきか後でやるべきか
- どの順番で動くか
この判断が遅くなると、 行動の初速が鈍くなる。
これは意志の問題ではなく、 心の処理能力が疲れているサイン。
2. 心の余白がなくなっている
競技者は、日常のほとんどを緊張の中で過ごしている。
こうした負荷が続くと、 心の中の余白が削られていく。
余白がなくなると、 動き出すためのスペースがなくなる。
これは怠けではなく、 心が「これ以上詰め込むと壊れる」と判断している状態と言える。
3. 心と身体の方向がズレている
心の奥では、
-
少し休みたい
-
一度立ち止まりたい
-
今のやり方に違和感がある
こう感じているのに、 行動はそれと逆方向に進んでいる。
このズレが大きくなるほど、 身体は動かなくなる。
これはサボりではなく、 心が方向を合わせ直す時間を求めているだけ。
4. 心が変化を始めると、一度静かになる
競技人生には、 必ずと言っていいほど、静かになる時期がある。
-
以前のやり方がしっくりこなくなる
-
モチベーションの質が変わる
-
何をしても手応えが薄い
これは後退ではなく、 心が次のステージに移る準備をしている状態。
変化の前には、必ず静けさが訪れる。
防衛体力を高めるための習慣
深呼吸(腹式呼吸)
吸う:吐く=1:2 このリズムは、心身の緊張をほどく。
競技者は呼吸が浅くなりやすい。 呼吸が浅いと、判断も動きも雑になる。
疲れる前に休む
限界まで頑張るのは競技者の癖。 だけど、防衛体力を守るには逆が必要。
限界の手前で止める。
これは弱さではなく、 心身を長く使うための技術と言っても良い。
何もしない時間を20分つくる
スマホ・テレビ・音楽・本を全部手放して、 ただ20分、何もしない。
この時間の目的は 脳を休ませること。
競技者は、練習・試合・分析・人間関係など、 一日中ずっと情報を処理している。
脳は筋肉と同じで、 使い続ければ必ず疲れる。
ただ、筋肉と違って 痛みや張りとして自覚しにくい。
だから脳が疲れると、
-
判断が遅い
-
動き出しが重い
-
集中が続かない
-
何をするにも腰が重い
こういう 行動の鈍さ として出てくる。
20分の「何もしない時間」は、 脳にとっての 完全な休憩。
情報を入れ続ける限り、脳は休めない。 だからこそ、競技者ほどこの時間が必要になる。
最後に伝えたいこと
行動力が落ちるとき心は確実に疲れている。
ただし、その疲れは 気持ちの弱さではなく、 防衛体力が削られた結果として起きている。
だから、動けない自分を責める必要はないし、今必要なのは、 頑張ることではなく、 回復すること。
心と脳が回復すれば、 行動力は自然と戻る。
競技者としてのあなたの力は、 消えていない。 ただ、少し休ませる必要があるだけ。
是非休む勇気をもってみてください。
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最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者