スポーツメンタルコーチ上杉亮平
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~アスリートを自己実現へと導く~
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制限を超える力──競技者のための心のコラム

 

競技者として挑戦を続けるあなたは、無意識のうちに「ここまで」と線を引いてしまうことがあるはずです。限界を感じる瞬間、挑戦を避ける瞬間──それは本当に「限界」なのでしょうか。実は、人が作る制限の多くは心の中にあり、自分自身が決めているものです。本稿では、制限の意味をスポーツの文脈で深く掘り下げ、気づき方、解き放ち方、そして制限を超えるための心の在り方を考えます。

 

人はなぜ制限を作るのか?

1. 安全のため

無限の可能性は同時に「不確実性」でもあります。人は危険を避けるために制限を作ります。スポーツで言えば、選手が「怪我をしない範囲」で練習を止めることです。安全のための制限は生存本能に根ざしています。しかし、過度に安全を優先すると挑戦の幅が狭まり、成長の機会を失います。

 

2. 効率のため

脳は無限の選択肢を処理できません。制限を設けることで集中が可能になります。スポーツでは「今日は持久走だけ」「今日は筋トレだけ」とメニューを絞ることが効率を生みます。制限は認知の省エネ戦略であり、集中力を高めるための工夫です。ただし、効率を求めすぎると新しい可能性を試す余白が失われます。

 

3. アイデンティティのため

「自分はこういう選手だ」という枠組みは自己同一性を保つために必要です。例えば「自分は短距離選手だから長距離は無理」と思い込むことが制限になります。確かに専門性は強みですが、枠に縛られると可能性を閉ざします。アイデンティティは力であると同時に制限でもあるのです。

 

4. 社会的適応のため

人は集団のルールや常識に従うことで孤立を避けます。チームスポーツでは「監督の指示に従う」「チームの戦術に合わせる」ことが制限になります。これは仲間でいるための戦略です。しかし、常識や慣習に従うだけでは、自分の可能性を広げる挑戦ができません。

 

5. 創造のため

制限は必ずしも可能性を奪うだけではありません。枠の中で工夫することで創造性が生まれます。スポーツでも「ルール」という制限があるからこそ戦術が生まれ、プレーが洗練されます。俳句の「五七五」と同じように、制限は表現を豊かにする土台にもなります。

 
無意識に限界を決めている

あなたを縛る制限は、外部ではなく心の中にあります。無意識に「ここまで」と決めてしまうのは、過去の経験や恐れからです。例えば「前回の試合で失敗したから、次も同じ結果になる」と思い込むことが制限になります。限界は自分で決めているのです。

 

どうしたら制限に気づける?

1. 自分の思考を観察する

「なぜ自分はこれをやらないのか?」と問い直すことで、隠れた制限が見えてきます。心理学的にはメタ認知と呼ばれ、自分の思考を客観的に捉える力です。

 

2. 行動のパターンを振り返る

いつも同じ選択をしているなら、それは制限のサインです。練習メニュー、試合でのプレー、日常の習慣を振り返ることで気づけます。

 

3. 他者の視点を借りる

コーチや仲間から「なぜ挑戦しないのか?」と問われたとき、答えに詰まるなら制限がある証拠です。他者の視点は無意識の制限を映す鏡になります。

 

制限を解き放つには?

1. ゴールを再設定する

制限を外す最も強力な方法は、ゴールを変えることです。百キロマラソンに挑戦した人の話が象徴的です。最初にフルマラソンを走ったときは42.195キロで倒れ込んだ。しかし100キロに挑戦したときは、42.195キロを軽々と超えていった。ゴールをどこに設定するかで、心と体の限界は変わるのです。

 

2. トレーニングを変える

ゴールが変わればトレーニングも変わります。制限を超えるためには、それに見合った量と質の練習が必要です。「とりあえずここまで」と設定したものは、そこにしか辿り着けません。偶然の「あわよくば」はやってこないのです。

 

3. ネガティブ感情を和らげる

制限を外そうとすると、不安や恐れなどネガティブな感情が湧きます。そのときは「今の感情は何点?」と自分に問いかけてください。過去最高を10点としたとき、今は何点かを数値化することで感情が和らぎます。頻繁に過去最高は更新されません。

 

そして、もし「過去最高だ」と感じても思い出してほしいのです。

──人間はすでに、生まれる瞬間という最大の困難を乗り越えている存在だということを。

ここで改めて、その困難がどれほど大きなものだったかを振り返ってみましょう。

 

環境の激変:母体という安全な環境から、光・音・温度・重力・呼吸といった未知の世界へ突然放り出される。

 

肉体的な試練:狭く曲がった産道を通るために、頭蓋骨を重ね合わせて形を変えながら圧迫に耐える。

 

呼吸の開始:母体から酸素を受け取っていた状態から、自分の肺で初めて呼吸を始める。産声は命のスイッチを入れる瞬間。

 

孤独と自立:へその緒が切れることで母体との直接的なつながりが断たれ、初めて「孤独」を経験し、自立が始まる。

 

つまり、生まれる瞬間は「暗闇から光へ飛び込む最初の挑戦」であり、「最大の困難を超える経験」なのです。 そして私たちは誰もがその困難をすでに乗り越えてきた存在です。だからこそ、今直面している困難は必ず超えられるものなのです。

最後のメッセージ

人は安全、効率、アイデンティティ、社会的適応、そして創造のために制限を作ります。 それは時に可能性を狭めますが、同時に自分を守り、集中を生み、仲間と歩み、表現を豊かにするための知恵でもあります。

 

ただし、その制限の多くは無意識に自分で決めているものです。だからこそ、まずは気づくことが大切です。気づいたうえでゴールを再設定し、それに見合ったトレーニングを積み、ネガティブな感情を和らげることで、制限はあなたの味方に変わります。

 

そして忘れてはならないのは──

あなたはすでに「生まれる瞬間」という最大の困難を乗り越えてきた存在だということです。

 

母体から切り離され、産道を通り、初めて呼吸をし、未知の世界に飛び込んだあの瞬間。人生で最初にして最大の挑戦を、あなたは成功させているのです。

だからこそ、今目の前にある困難は必ず超えられる。制限を超える力は、すでにあなたの中に宿っています。

 

競技者としての挑戦は、制限を恐れることではなく、制限を理解し、受け入れ、そして力へと変えること。その営みこそが、あなたをより深く、より強く、そしてより自由にしていくのです。

 

とはいえ、制限に一人で気づくことは簡単ではありません。だからこそ、その制限に気づいてもらう役割を担うのがスポーツメンタルコーチングです。もし今伸び悩み、自分の制限に気づけていないのであれば、ぜひ体験コーチングという場で勇気を出してあなたの悩みを話しに来てください。きっとあなたのお役に立てるはずです。お待ちしています。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

コラム著者
プロスポーツメンタルコーチ上杉亮平
全てのアスリートが競技を楽しみ、自分らしさを輝かせる世界を創る。ことを目指し
「メンタルで視点(せかい)が変わる」この言葉胸にアスリートを自己実現へと導くサポートをしています。詳しくはこちら

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