スポーツメンタルコーチ上杉亮平
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高い基準と優しさは共存できる──競技者が進化するためのセルフマネジメント論

 

高い基準を持つことは、厳しさを強いることなのか?

競技者として生きる中で、「もっとできるはず」「まだ足りない」と自分に言い聞かせる瞬間は少なくありません。 高い基準を持つことは、向上心の証であり、成長への意志でもあります。 しかしその一方で、「自分に優しくしてはいけない」「甘えになる」といった思い込みが、心の余白を奪ってしまうこともあります。

本当にそうでしょうか? 高い基準と優しさは、対立するものではなく、むしろ補い合う関係にあるのです。 このコラムでは、競技者が長期的に進化するために必要な「基準の高さ」と「自己への優しさ」の両立について、心理学・脳科学・実践知を交えて深く掘り下げていきます。

 

基準は高く持つべき

──挑戦と達成のバランス

心理学者ロックとレイサムによる「目標設定理論」では、明確で挑戦的な目標は、曖昧で簡単な目標よりも高いパフォーマンスを引き出すとされています。 つまり、基準が高いほど、集中力・努力・達成感が高まりやすいのです。

ただし、ここで重要なのは「挑戦と達成のバランス」。 高すぎる基準は挫折を招き、低すぎる基準は成長を止めます。 競技者にとって理想的なのは、「少し背伸びすれば届く」ライン。 それは、自分の限界を押し広げるための“挑戦的な余白”なのです。

 

知能観と基準設定の関係

──自分をどう捉えているかがすべて

キャロル・ドゥエック教授の「知能観」によれば、 人は「能力は努力で伸びる」と考えるか、「能力は固定されている」と考えるかで、目標設定の質が変わります。

 

増大理論を持つ人は、高い基準でも粘り強く挑戦し、失敗を学びに変えます。

 

固定理論を持つ人は、失敗を恐れて基準を下げ、挑戦を避けがちになります。

 

つまり、基準の高さは「自分は成長できる」という信頼とセットでなければ機能しないのです。 競技者にとって、自分の可能性を信じることは、技術以上に重要な土台です。

 

「高い基準=自分に厳しくしなければならない」は誤解

高い基準を持つと、「もっとやらなきゃ」「甘えてはいけない」と自分に厳しくなりがちです。 しかし、厳しさが自己否定に変わった瞬間、成長は止まります。

心理学的には、自己批判は扁桃体を過剰に刺激し、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を増加させることが分かっています。 これにより、集中力や判断力が低下し、競技力にも悪影響が出るのです。

厳しさは必要です。 ただしそれは、「自分を責める厳しさ」ではなく、「自分を信じて背中を押す厳しさ」であるべきです。

 

自分に優しくできる人ほど、長期的な成長と安定につながる

「セルフ・コンパッション(自己への思いやり)」という概念は、心理学者クリスティン・ネフによって提唱されました。 彼女の研究では、自分に優しくすることが、ストレス耐性・回復力・自己効力感を高めることが明らかになっています。

優しさとは、失敗しても自分を責めず、挑戦したことを認める態度。 苦しいときに「それでもやってみよう」と自分を励ます力。 他人と比較せず、「昨日の自分」と向き合う姿勢。

これらは、脳の前頭前野を活性化させ、冷静な判断と持続力を支える“整える力”です。 優しさは、競技者の土台を安定させる“静かなエネルギー”なのです。

 

「優しさ=甘え」と混同する人へ──違いを見極める視点

優しさと甘えは、似て非なるものです。 その違いは、「前に進むか、止まるか」にあります。

 

優しさは、自分の弱さを認めながらも前に進む力

 

甘えは、苦しさから逃げるために行動を止める力

 

脳科学的には、優しさは安心感を生み、扁桃体の過剰反応を抑えます。 一方、甘えは「やらない理由」を探す思考に陥り、自己効力感を低下させます。

競技者にとって、優しさは「整える力」であり、甘えは「止める力」。 優しさは前進を促し、甘えは停滞を生むのです。

 

優しさと高い基準は両立できる──その技術と姿勢

両立の鍵は、「優しさの中に挑戦を込めること」。 これは、単なるメンタル論ではなく、競技者としての成熟の証です。

 

  1. 今の自分を認める。でも、もっと伸びると信じている

 

  1. 失敗しても責めない。でも、次はどうするかを考える

 

  1. 休むことも必要。でも、再び立ち上がる力を信じている

 

このような優しさは、自己理解と自己信頼に基づいた“前向きな厳しさ”です。 それは、競技者としての深さと強さを育てる土壌になります。

 

進化する競技者へ贈るメッセージ

高い基準は、あなたの未来を切り拓く道標です。 優しさは、その道を歩き続けるためのエネルギーです。 どちらか一方では、長くは続きません。 両者を手にしたとき、競技者としての真の進化が始まります。

自分に優しくすることは、甘えではありません。 それは、自分の可能性を信じること。 そして、どんな状況でも「挑戦する自分」を支える力です。

どうか忘れないでください。 優しさと高い基準は、共存できる。むしろ、共存させることで、あなたの競技人生は深く、強く、しなやかに育っていくのです。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

コラム著者
プロスポーツメンタルコーチ上杉亮平
全てのアスリートが競技を楽しみ、自分らしさを輝かせる世界を創る。ことを目指し
「メンタルで視点(せかい)が変わる」この言葉胸にアスリートを自己実現へと導くサポートをしています。詳しくはこちら

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