「嬉しいのに、素直に喜べない」──競技者の自己評価と承認のズレ

はじめに──なぜ、嬉しいはずなのに喜べないのか?
試合で勝った。 自己ベストを更新した。 監督や仲間から「よかったよ」と声をかけられた。
それなのに、心の奥ではどこかモヤモヤしている。 「いや、まだまだだ」 「たまたまだし」 「本当はもっとできたはず」
そんなふうに、嬉しいはずの瞬間に、素直に喜べない自分がいる── この感覚に覚えがある競技者は、きっと少なくないはずです。
このコラムでは、なぜ競技者は「喜び」をまっすぐ受け取れないのか? その背景にある「自己評価」と「他者からの承認」のズレに焦点を当て、 心から喜びを感じるための視点と整え方を探っていきます。
1. 喜びを遮る“内なる声”の正体
自分に厳しすぎる「内なる評価者」
競技者は、日々の練習や試合の中で、自分自身を評価し続ける存在です。 「もっとできる」「まだ足りない」「これでは通用しない」── そんな内なる声が、常に自分を見張っている。
この“内なる評価者”は、成長を促す原動力にもなりますが、 時に、喜びや達成感を否定する存在にもなってしまいます。
たとえ結果が出ても、「これは本当の実力じゃない」「相手がミスしただけ」と、 自分の成果を受け取らず、自己評価を引き下げてしまうのです。
2. 他者からの承認が“ズレて”感じられる理由
「褒められても、納得できない」
周囲からの賞賛や評価を受けても、 「本当の自分を見ていない」「表面的な結果だけを見ている」と感じてしまうことがあります。
これは、自分の中の基準と、他者の評価基準が一致していないことが原因です。
- 自分は「内容」を重視しているのに、周囲は「結果」を褒める
- 自分は「プロセスの質」にこだわっているのに、周囲は「勝敗」だけを見る
- 自分は「理想のプレー」とのギャップを感じているのに、周囲は「よくやった」と言う
このズレがあると、承認の言葉が心に届かず、むしろ違和感や孤独感を生むことすらあります。
3. 喜びを受け取れない心理の背景
「もっと頑張らなきゃ」が喜びを押しのける
競技者は、常に“次”を見ています。 「今日の結果に満足していたら、成長が止まる」 「喜んでいる暇があったら、次の課題に向き合わなきゃ」
そんな思考が、喜びを感じること=甘えや油断と結びついてしまうことがあります。
でも、本当にそうでしょうか?
喜びを感じることは、決して成長を止めることではありません。 むしろ、喜びをしっかり受け取ることが、次の挑戦へのエネルギーになるのです。
4. 喜びを受け取る力を育てる3つの視点
① 「嬉しい」と感じた自分を否定しない
まずは、喜びを感じた自分を素直に認めること。 「嬉しい」と思った瞬間に、「でも…」と打ち消す癖があるなら、 その“でも”の前で、いったん立ち止まってみてください。
「今、嬉しいと感じた」 その感情は、あなたの中に確かに存在しています。 それを否定せずに受け止めることが、自己肯定感の土台になります。
② 自分の“評価軸”を言語化する
他者からの承認がしっくりこないときは、 自分が何を大切にしているのかを明確にすることが大切です。
- 自分はどんなプレーに価値を感じるのか?
- どんなときに「よくやった」と思えるのか?
- どんな言葉なら、心から受け取れるのか?
自分の評価軸が明確になると、他者の言葉を自分の軸で翻訳して受け取る力が育ちます。
③ 喜びを“共有”することに挑戦してみる
喜びは、一人で抱えるよりも、誰かと分かち合うことで深まる感情です。 「嬉しい」と言葉にすること。 「ありがとう」と感謝を伝えること。 「今日はちょっと満足してる」と打ち明けること。
最初は照れくさいかもしれません。 でも、喜びを共有することは、信頼関係を育てる行為でもあります。
おわりに──喜びを受け取ることは競技者の力になる
「嬉しいのに、素直に喜べない」── その感情の裏には、競技者としての誠実さや、成長への強い意志が隠れています。 それは、ただの迷いではなく、真剣に競技と向き合っている証です。
でも、だからこそ、喜びを受け取る力もまた、競技者にとって必要な力です。 それは、結果に甘えることではなく、自分の努力を認める勇気であり、 次の挑戦へと進むための、静かで確かなエネルギーです。
- 喜びを感じることは、甘えではない
- 喜びを受け取ることは、次の挑戦への燃料になる
- 喜びを共有することは、信頼とつながりを育てる
競技者として、そして一人の人間として、 「嬉しい」と感じた瞬間を、どうか否定しないでください。 その感情は、あなたの中に確かに存在し、 あなたが積み重ねてきた努力の証でもあるのです。
もし今、「喜びを受け取ること」に少し戸惑いがあるなら── その感情を、誰かと一緒に見つめてみるのもひとつの方法です。
私 上杉亮平は、スポーツメンタルコーチとして、 競技者が抱える“言葉にならない感情”に寄り添い、 その中にある喜びや悔しさを、一緒に見つめ、分かち合える存在でありたいと願っています。
あなたが自分の感情を大切にできるように、いつでもそばでサポートさせていただきます。 もし少しでも気になることがあれば、体験コーチングというかたちで、まずは気軽に話してみませんか?
あなたの「本音」に、静かに、でも真剣に向き合う時間を、一緒に過ごせたら嬉しいです。
このコラムが、あなた自身の感情と向き合うきっかけとなり、 「嬉しい」をまっすぐ受け取る力が、次の一歩を踏み出す原動力になることを願っています。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コラム著者