「めんどくさい」を超える力─脳と心が変わる小さな一歩の積み重ね

私たちが何か新しい習慣や挑戦を始めようとするとき、 「めんどくさい」と感じる瞬間があります。
それは自然な感覚です。 脳が慣れ親しんだ環境や行動を維持したいと思う性質から生まれる反応ですが、 この感情が、目標に向かう道を閉ざしてしまうのでしょうか?
「めんどくさい」と感じる理由を知る
この感情の背景には、脳の仕組みが深く関わっています。
脳は本来、エネルギー消費を最小化するようにできており、 慣れた行動には安心を覚えます。 前頭前皮質と呼ばれる脳の部位は、新しい課題や未知の挑戦を処理する司令塔の役割を担っており、 ここが活性化するとエネルギー消費が増えるため、「めんどくさい」と感じやすくなります。
さらに、心理学でいう「現状維持バイアス」も影響しています。 これは「今のままが楽」と感じ、新しい変化に抵抗を覚える心の動き。 つまり、めんどくささは“自分を守ろうとする本能”でもあるのです。
◆ どうしたら「めんどくさい」を超えられるか
その感情を無理やり押し込むのではなく、 “仕組み”と“向き合い方”を変えることで、乗り越えることは可能です。
- 小さなステップを踏む
最初の一歩を「とにかく軽くする」ことで、行動のハードルが下がります。 たとえば「トレーニングウェアを着るだけ」「5分だけ運動する」など。 “始めること”が最大の壁だと知ると、行動が身近になります。
- 行動をパターン化する
「もし〇〇したら、△△をする」という行動ルールを作ると、脳が次の動作を受け入れやすくなります。 例:「朝起きたら、ランニングシューズを履く」「PCを開いたら、まずストレッチする」など。
- 「めんどくさい」は挑戦のサインと捉える
「やりたくない」と感じることこそ、変化が始まる合図。 脳が“変化の準備”をしている証拠だと思えば、その感情を前向きなサインに変えられます。
◆ 「めんどくさい」を超えた先に得られること
この感情を乗り越えるたびに、脳は進化します。 「神経可塑性(neuroplasticity)」という脳の性質により、 新しい行動は神経回路として組み込まれ、やがて“当たり前の習慣”へと育っていく。
そしてこの力は、スポーツの場面だけでなく、 人生のあらゆる局面で粘り強く行動し続けるための土台にもなります。
◆ 「めんどくさい」と向き合うことは、自分と向き合うこと
「なんで自分はこんなに動けないんだろう」「なぜやる気になれないんだろう」 そう思うときこそ、“行動の意味”を一段深く見つめ直すタイミングかもしれません。
「めんどくさい」と感じるのは、脳が怠けているからではなく、 変化を前にして揺れている心の声でもあります。
そんな自分を責めるのではなく、そっと理解することで、 次の一歩が、これまでとは違う重みを持ち始める。
たった一回、いつもの自分を裏切ってみる。 その行動は、小さくても確実に“自分との信頼関係”を築いていきます。
最後のメッセージ
「めんどくさい」は、一度きりの壁ではありません。 それは繰り返し現れては、また次の挑戦へと続いていきます。
だからこそ、その感情を否定せずに受け入れて、 小さくても確かな行動を積み重ねること。 そのプロセスが、いつしか「めんどくさい」を超える力に変わっていくはずです。
めんどくさいは挑戦のサイン。その壁を越えたとき、あなたは新たな自分を見つける。そしてその成長は、どんな目標にも続く道となる。
コラム著者